第190回 130円VS110円、見方分かれる2016年ドル/円相場 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第190回 130円VS110円、見方分かれる2016年ドル/円相場 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

2016年1月4日大発会は日経平均が582.73円安の18,450.98円まで3.06%も下落。ドル/円相場も120.30円で寄り付いたものの、あれよあれよと120円大台を割り込み118.69円まで大きく下落しています。波乱の幕開けとなった2016年のマーケットですが、ドル/円相場の見通しは130円方向への円安ドル高が継続するという見方と110円方向への円高ドル安へと転換したという見方に分かれています。円安派、円高派の基本的な変動要因とそのロジックをまとめてみました。

【円安論】 
1)日本と米国の金融政策の違い

米国は2015年12月、金利の引き上げを決定しました。2016年末までに3回~4回の利上げで1%超まで金利が上昇するというのが現在のコンセンサス。一方、日本はゼロ金利政策と量的金融緩和策を継続しており、もう一段の追加緩和観測もくすぶっています。教科書的には米国と日本の金利差拡大でドル高。


2)政局安定~高い安倍内閣支持率

安倍政権支持率は、安保採決で一時下がったものの、アベノミクス2.0のリリース、矢継ぎ早の海外へのトップ外交など、経済最優先の政権運営に立ち戻ったことで支持率を回復しており、政局は安定している。7月に参院選(衆参ダブル選の可能性も)があり、選挙に向けては相場安定政策をとるとの見方も株価をサポート。ドル/円の下値を支えるとみられる。

3)継続する日本企業の海外投資(M&A)

少子化の日本では内需拡大は難しく、本邦企業は日本国内だけでなく海外でも収益をあげられる構造へのシフトが急務。海外企業への投資、買収によるドル買い需要が継続。


4)原油安のメリットも

原油価格動向が実体経済に影響を与えるまでには18カ月のタイムラグがあるとの指摘。
原油安のプラスの影響はこれから出てくる?!


【円高論】 

1)相場のサイクル

変動相場制移行後、4年以上継続した円安局面はない。3年陽線となったのは、95-97年、2012-14年の2回のみ、2016年4年目は...?!


2)利上げの過去の経験則

利上げが材料出尽くしとなってドル安に転じる論。1999年、2004年の利上げ開始の局面では半年近ドル安・円高に(ただし、円安論ではこの時の円高は米利上げが米株下落を招き、株式マネーが日本株にシフトした結果の円高で、「株式投資に為替ヘッジが付加されていなかった時代の話」と言われている。)。


3)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)ほぼ投資目標達成?!

2015年の公的年金運用の対外株式投資は10月までで18兆5000億円の買い越し。投資も一巡し16年はGPIFによるドル買いを期待しにくい。むしろ円高となればヘッジのドル売り参入の可能性も。


4)貿易赤字の縮小

2014年は約10.4兆円の貿易赤字を記録(約2.6兆円の過去最小の経常黒字)だったが、
2015年貿易赤字は10月時点で5700億円(経常黒字16.7兆円超)まで縮小。10兆円近くの円安フローが消滅している。


5)原油下落とジャンク債の問題化
 
クレジット市場ではジャンク債を組み入れたハイイールドファンドの償還凍結やポートフォリオ精算のニュースが出始めている。ジャンク債を保証するCDSは急騰。リーマンショックもサブプライムローン関係の損失でCDSが急騰したことが始まりだった。


6)中国景気失速懸念 中国元安

中国は人民元安政策に入った。元安加速で中国からの資本流出が加速するリスクがあり、中国発の金融不安は残されたまま。新年早々、PMI悪化による中国株売りでサーキットブレーカーが発動し、取引が停止される波乱の幕開け。


7)黒田ライン顕在

2015年6月日銀黒田総裁は2015年6月に実質実効為替レートでは充分円安でありこれ以上円安にはなりそうにない、とコメント。125円が黒田ラインとして意識されるようになり、実際、それ以降この水準を超える円安にはなっていない。


ざっとまとめてみると、円高の材料が増えてきた印象です。昨年2015年のドル/円相場は高値と安値の幅が10円程度に収まり、1973年の変動相場制以降で最狭となりました。仮に今年、最狭の10円動く年だったとしても120円スタートのドル/円相場は下方向に110円の可能性は否定できません。上下5円だとしても115円。大発会から2円近くも動いているボラティリティの荒いタートとなりましたが、円安、円高と決め打ちせずに、トレンドに逆らわないポジション構築を心掛けたい局面ですね。本年もよろしくお願いいたします。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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