第145回 爆買いの次は日本への投資 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第145回 爆買いの次は日本への投資 【北京駐在員事務所から】

明けましておめでとうございます。
本年も、北京より中国に関する様々なニュースや話題をご報告します。どうぞよろしくお願いいたします。
2016年初回の本コラムでは、中国企業による日本の旅行関連事業への投資が活発になっているとの話題をご報告します。

昨年2015年の中国人訪日旅行客は前年比倍増の勢いで、「爆買い」に象徴される旺盛な消費も注目を集めました。
日本で中国人旅行客の宿泊、食事、観光やショッピングの需要(市場)が急拡大していることを受け、中国企業がその恩恵にあずかろうと、M&Aなどにより日本に進出する動きを強めています。

昨年11月に、上海の商業施設運営会社「豫園商城」が、北海道の複合リゾート施設星野リゾート トマムの全株式を買収すると発表しました。
同リゾートは北海道内で最大規模のスキー場を有し、高層ホテル群やゴルフ場など充実した施設と相まって、高い知名度を誇っていますが、1980年代の開業当時の運営会社が経営破綻するなど紆余曲折もあり、2005年からリゾートホテルの運営で実績のある星野リゾートにより運営されています。
今回の株式譲渡の後も、リゾートの運営は引続き星野リゾートが行うそうです。
一方で、豫園商城の筆頭株主である不動産投資及び開発会社の復星集団(上海市)は、傘下にリゾート運営会社のクラブメッド(日本では「地中海クラブ」と呼ばれていました)を有することから、今後クラブメッドのトマムリゾートへの参加や、中国人旅行客を呼び込むための新たな施設の建設などが行われると噂されています。

北海道の観光振興を担う北海道観光振興機構は、今回の買収が中国企業による北海道への投資としては最大規模のものであるとしつつ、他にも多くの中国企業から、投資あるいは進出に関する照会が寄せられているとし、今後に期待を示しています。
中国人に限らず、外国人観光客の多くは、まずは東京、大阪などの大都市を訪問しますが、リピーターには北海道が大人気です。2022年の北京でのオリンピック、パラリンピック冬季大会開催に向け、中国では今後スキーブームが起こるとも言われており、パウダースノーが楽しめる北海道への注目度が一段と高まっていると言われています。
北京から北海道へは、札幌(新千歳)、旭川及び函館への航空便が就航していますが、今後他の都市からの便を含め、中国各地から北海道への送客の動きが一段と強まることになりそうです。

格安航空会社の春秋航空も、昨年10月に日本企業との提携により、日本国内でのホテル事業に進出すると発表したほか、12月には家電量販店のビックカメラとの提携を発表し、宿泊とショッピングの分野で、中国人旅行客の需要をつかもうともくろんでいます。
家電量販店大手蘇寧電器の傘下に入り、外国人向け免税店への業態転換を果たしたラオックスが代表例ですが、日本企業の間でも、今後中国企業との提携により、あるいは中国企業のグループに入ることにより、生き残りや成長を目指す動きが強まるものと予想されます。

高度成長期からバブル期にかけては、日本人の海外旅行客が急増し、日系企業が欧米主要都市でホテルを開業したり、大手百貨店がお土産の需要を当て込んで店舗を開設したりという動きが盛んに見られました。
バブル崩壊後長期に及んだ景気低迷もあり、それらのホテルや店舗の多くは閉鎖あるいは海外企業への譲渡を余儀なくされました。
現在の中国企業の日本への投資が、当時の日本企業に重なって見えます。
今後数年間、恐らく2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会までは、中国人訪日旅行客の増加が続くものと思われます。問題はその後です。
訪日客の多くがリピーターとなり、投資を行う中国企業も、また日本企業も、長きにわたり安定的に利益を得られるよう、望みたいと思います。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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