第191回 ランド暴落~豪ドルと並ぶプロキシー通貨の可能性 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第191回 ランド暴落~豪ドルと並ぶプロキシー通貨の可能性 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

成人の日、日本の祝日となった11日月曜日の東京時間早朝に、南アフリカの通貨ランドが暴落。ランド/円で6.56円近辺まで、ランド/ドルも17.91ランドまで窓を空けて大きく下落しました。米ドルに対してのランド安は2011年からの5年にも渡る長期トレンド。円に対しては、さらに遡って2006年から10年にも及ぶ長期でのランド安が続いています。リーマンショックなどの歴史的な金融危機も背景にあるため、長期でのランド安の原因は一口に説明することは難しいのですが、少なくとも直近1年のランド下落の背景には「中国」の影響が大きいものと思われます。ランド/円相場はリーマンショック以降下げ止まってレンジ相場となっていたのですが、2015年に入ってから再び下落をはじめ、足元で過去最安値を更新しています。

チャイナショックが顕在化したのは人民元切り下げによる混乱で世界同時株安の様相を呈した2015年8月のことでしたが、中国経済の減速は商品市況安からも懸念されており、上海総合指数のバブル的な上昇がいつ天井をつけるのかがリスク要因として警戒されていました。8月のチャイナショックの際は、なりふり構わぬ中国当局の株価維持策と過度な人民元安誘導を停止したことで混乱は鎮静化したように見えましたが、12月に入って再び人民元安が加速し、年始からの金融市場の混乱を招いています。
中国リスクは為替市場にどのような影響をもたらすでしょうか。

為替トレーダーの間では「豪ドル」を中国のプロキシー通貨として「新規で売る」というような動きが加速します。プロキシー、つまり代替です。中国が下がる時に代わりに豪ドルを売る、ということです。オーストラリアの資源の多くがアジア諸国に輸出されていますが、中でも中国の占める割合が大きく、オーストラリア経済はリーマンショック以降、中国の成長にサポートされてきました。中国が成長する過程では、中国と関係が深い豪ドルを保有することで、中国元に投資しているのと同様の利益を期待できるとして買われてきたのです。これが逆流しているのが現在の値動きです。中国が減速し中国株や人民元が売られる際は、真っ先に売られる通貨となってしまいした。中国の株式市場は規制が多く、またルールも中国本位でコロコロ変わるためリスクが大きい。人民元取引も同様です。中国の株や通貨を直接取引するのはリスクが大きいため、代わりに豪ドルが中国資産の代わりにトレードされているのです。

そして、同様のことが南アフリカの通貨、ランドでも起こっているようです。中国と南アフリカの貿易は拡大してきました。また、中国の南アフリカへの投資は大きく、昨年2015年12月にも600億ドル(およそ7.3兆円)の拠出が発表されましたね。

中国がアフリカへ7.3兆円の支援を表明 経済依存は植民地への道

http://the-liberty.com/article.php?item_id=10581

記事中には2000年以降、中国とアフリカにおける貿易総額が急速に増加しており、現在では2000億ドルを超えているとの記述があります。日本は300億ドル程度で、中国と南アフリカの貿易額は日本の6倍以上にも上るとされています。国際通貨基金(IMF)のレポートでは中国とアフリカの貿易額は、米国やEU諸国を凌ぎ、世界で最も強いパイプを築いている、ということですが、こうした背景を考えると、中国人民元下落は南アフリカの通貨ランドの下落につながるといった相関があると見ることもできるのではないでしょうか。豪ドルと並ぶ中国リスクのプロキシー通貨として、ランド安が進んでいるとするならば、ランド安が落ち着くためには中国リスクの鎮静化が必要ということになります。足元では、ランド安が加速しているため、戻り局面に入る可能性もありますが、史上最安値を付けた相場では安値の節目が存在しないため、どこまで下落するかわかりません。中国リスクは2016年の最大のテーマとなるでしょうから、ランド相場も、簡単には底入れ反転というわけにはいかないでしょう。長期のスワップ金利狙い、というようなトレードをするならくれぐれもレバレッジを小さくして、小さなポジションから。個人的にはまだ、ランドを買うというような時期ではないと思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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