第146回 一人っ子政策の廃止で出生数はどの程度増えるか? 【北京駐在員事務所から】

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第146回 一人っ子政策の廃止で出生数はどの程度増えるか? 【北京駐在員事務所から】

中国では今月より、従前の一人っ子政策が廃止され、全ての夫婦が、無条件で第二子を設けることが認められます。「二人っ子政策」への転換です。
急激に進む少子高齢化と、近い将来に予想される労働力の不足への対策として実施されたものですが、この法改正で出生数が大幅に増えるとの見方と、特に都市部での住宅事情や教育費の問題から、子供を一人にとどめる夫婦が多くなるとの見方が交錯しています。

中国で9,000万人の会員を有する男女のマッチングサイト「珍愛網」が、このほど会員3,000名を対象に、「結婚後に子供二人を望むか?」との調査を行い結果を公表しました。
回答者の67%が二人を望むと回答し、月収20,000元(約36万円)以上の層では70.8%と、より多くの人が子供二人を希望しているとの結果になりました。
調査対象者が未婚の男女ですので、希望あるいは願望の要素も大と言えますが、一人っ子政策廃止の影響が小さくないことが理解できます。

珍愛網の創業者は、収入の多寡が第二子を設けるか否かへの姿勢を左右していると指摘し、あわせて、現在の未婚者の多くが1980年代、90年代の生まれで、ほとんどが一人っ子であるため、自身の子供は兄弟姉妹のいる環境で育てたいとの意向が強いと述べています。

北京で大手企業に勤める33歳の女性も、大家族への憧れがあり、結婚後は子供を二人持ちたいと考えています。一方で、現在の仕事が残業、出張ともに多く、結婚、出産後に仕事を続け、現在と同水準の収入を得ることが出来るかについて、不安が大きいとも述べています。
日本でも、結婚、出産後の女性のキャリア継続については困難が多いと指摘されていますが、中国の働く女性たちも同様の問題に直面しています。

また、家計やキャリアの問題をクリアしても、企業や職場によっては別のハードル、即ち「妊娠、出産のスケジュール管理」が待っています。
東部の山東省に住む31歳の銀行員の女性は、二人目の子供を持ちたいと考えていますが、勤務先の支店の女性行員4名の間で、妊娠、出産の時期が重ならないよう、順番が定められています。
第一子が優先等のルールがあり、彼女が妊娠、出産を許されるのは二年後の2018年になります。また、もし半年以内に妊娠しなかった場合、同僚に順番を譲らなければならないそうです。
同様のルールを設ける企業、職場は少なくないそうで、まだまだ「計画出産」という考え方が根強いことが分かります。

経済発展や環境問題、海外旅行ブームや不動産価格の乱高下など、中国は様々な点で日本を追いかけていますが、少子高齢化や労働力の不足については、遠からず日本を追い抜いて深刻な問題になることが予想されます。
年金制度が未整備の中国で、子が親を扶養するとの伝統的な価値観に頼ることが出来るのか、また労働力不足への対策として、例えば移民の受入れに動くのか等、様々な問題とそれらへの対応策は、日本にとっても大いに参考になるのではないかと思います。
安倍首相が目標に掲げる「希望出生率1.80」も、どの程度の意味を持つものかいささか疑問に思われますが、日本、中国それぞれの少子化対策が果たして実を結ぶのか、まずはここ数年が勝負と思われます。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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