第68回 「シニア」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第68回 「シニア」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。2016年の株式市場は、日経平均が算出された1950年以来初となる大発会から6日続落という最悪のスタートとなりました。先週央にはようやく反発となりましたが、その後すぐに失速と自律反発の域は出ていない印象です。業界では、これを「デッド・キャット・バウンス」(高いところから落とせば、死んだ猫でも跳ね返る。転じて、暴落相場の中の小幅反発を指す)とさえ呼ぶ向きもあるほどで、現在の市場に関してはかなり悲観的な見方が広がってきているように思えます。ただ、こういった相場であればあるほど、銘柄選択や投資タイミングの見極めといった実力が如実に出てくるものです。読者のみなさんも目先の相場の振幅に振り回されることなく、今こそご自身の得意とする投資スタイルで地道に臨まれていることと想像します。筆者は、それが結果的に好パフォーマンスに繋がる一番の近道だと考えています。

さて、今回取り上げるテーマは、「シニア」です。少子高齢化の進む日本において、シニアは今や日本の消費を支える中核層を形成しています。最近こそは訪日旅行者による爆買いにその座を奪われてしまいましたが、その重要性には些かも翳りはありません。既に高齢者世帯の年間最終消費支出は100兆円を越えており、一部では名目家計最終消費支出(持家帰属家賃を除く)の50%弱に迫るという試算もあるようです。今後、世界景気の減速懸念を前提とすれば、この爆買いの継続性も慎重に捉えておく必要があるでしょう。そうなれば尚更、国内シニアの消費に対し、再び注目が集まるシナリオは無視できないと考えます。その時に備え、今の段階でシニア層というものをまとめておこう、というのが今回の狙いとなります。

一般に、シニアというと定年後の方々を指すケースが多いようです。要するに、概ね60代以上で、時間の使い方に余裕のある層、という印象でしょうか。読者の中にもご自身がまさにこの定義に当てはまるシニアという年代の方もおられるかもしれません。では、そのシニア層にはどういった消費傾向が見られるのでしょうか。総務省による全国消費統計を見ると、シニア世代の消費が他の世代と比べて特徴的なのは、子供や孫への贈与金、住宅などの設備費や維持補修、そして国内外旅行費などの比率がかなり高い点にあります。注目すべきはやはり国内旅行費や住宅設備費用でしょう。統計からは、シニア層が積極的に旅行に出ており、同時に生活環境改善のための出費も容認している傾向が見えてくるのです。このことは、シニア層がかなりアクティブに動いている様子を想像させます。

こういった「元気な」シニア層はアクティブシニアとも呼ばれており、一昔前の「おじいちゃん、おばあちゃん」というイメージとはかなりかけ離れた消費行動を採っているようです。しかも、どうもこのアクティブシニアはシニア層の極一部ではなく、統計的にはむしろアクティブシニアそのものが主流であるかように推測されるのです。変な例えですが、漫画サザエさんに登場する波平さん(主人公サザエさんのお父さん)がその変化を物語っています。彼の設定は54才ということなのですが、現代の50代前半はもっと若いというのが率直な印象ではないでしょうか。サザエさんが描かれたのは昭和の時代。平成に入ってからの高齢者のイメージは格段に若返っています。株式投資を考えるうえでも、アクティブシニアの取り込みを試みる企業にはどこかで市場の注目が集まるのではないか、と想像します。

一方、気になるのは、アクティブとなっているシニア層の主たる消費先が旅行にとどまっている点です。本来であれば、消費先がもっと多彩であっても不思議ではありません(若干、ゴルフプレー費や園芸品などが目立つ程度)。ここからは、実はアクティブ化が進んでいるシニアに向けて、そのニーズに合致したサービスが供給しきれていないのではないか、という疑念が浮かんできます。実際、シニア層取り込みに注力する多くの企業においても、シニア層の真のニーズを把握しきれていないと指摘する声は少なくありません。シニアと言えば介護や健康といった商品・サービスの提供は紋切型になっているという感触があるようです。あくまで仮説ですが、子・孫への贈与金が消費において非常にウエイトが高いのも、他にお金の使い道がないため、と言えるかもしれません。ニーズに本当に合致した商品・サービスが提供されることになれば、もっとシニア層は自分のためにお金を使うようになる可能性は十分あると考えられるのです。換言すれば、うまくニーズに合った商品・サービスを提供するシニア向けビジネスが生まれてくれば、大きな成長が期待できるはずです。当然、それらは株式市場においても大きなテーマとして注目されると予想しています。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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