第148回 暗躍する地下銀行に対する捜査の手が伸びるも・・・ 【北京駐在員事務所から】

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第148回 暗躍する地下銀行に対する捜査の手が伸びるも・・・ 【北京駐在員事務所から】

経済成長が続き、貿易やサービスなどで外国との取引、交流が活発化している中国では、犯罪行為や闇取引に伴う資金移動のニーズも増えており、非合法の地下銀行の活動が盛んになっています。

南部広東省の警察当局は、昨年4月から12月の9ヶ月間に、地下銀行を経由した取引83件を発見しました。件数は前年2014年一年間の7倍にも達しています。
あわせて、地下銀行の非合法ウェブサイト79件を発見し、違法取引に関与したとして容疑者231名を拘留しました。
押収された現金は3,710万人民元(約6.7億円)に、また凍結された口座は3,491件、それらの残高合計は6.65億人民元(約120億円)に達しています。
地下銀行を利用した取引の目的は、賭博行為、詐欺行為、麻薬や薬物の取引に加え、汚職官僚が収受した賄賂の海外への送金が主なものとなっています。

広東省は、製造業及び物流の一大集積地として成長を続けています。香港やマカオに隣接していることもあり、諸外国との貿易や経済交流も活発で、地下銀行へのニーズも高いものがあります。
発見された取引83件中、32件は香港に隣接する深圳市におけるもので、その他の取引も、ほとんどが近隣の広州市、珠海市などの珠江デルタ地域で行われたものでした。
また、20件の取引で、1億元(約18億円)以上の資金移動が行われ、深圳市では442億元(約8,000億円)に上る巨額取引も発見されています。
賄賂の不正送金の例では、省都の広州市に隣接する佛山市で、汚職官僚二名が、マカオの銀行に1,280万元(約2.3億円)を送金し、当局に拘束されました。

広東省の経済犯罪捜査部門の責任者は、地下銀行の活発化は、正規の金融機関の取引、業務を阻害しており、看過できないと述べています。
同責任者は、捜査の強化で地下銀行は打撃を受けており、広東省内の金融秩序は改善しているとしながらも、戦いは長期かつ厳しいものになるとし、引続き中国人民銀行(中央銀行)や司法機関と協調して特別態勢での捜査を行うと述べています。

中国では、外貨両替や海外送金について厳しい制限があり、例えば欧米諸国や日本で不動産物件を購入しようとしても、支払代金(外貨)を用意することは容易ではありません。
しかし、実際には中国国内に販売代理業者がおり、その銀行口座に人民元を送金することで海外物件を購入できるようになっています。代理業者と不動産の売主の間でどのように資金決済がされているのかは、いささか怪しいところです。
ニーズあるところにはサービスありということで、地下銀行が台頭するのも当然と言えば当然なのですが、中国の場合、取り締まるべき側の官僚にも、賄賂の海外送金という地下銀行を利用する動機がありますので、撲滅は至難と言わざるを得ません。
捜査機関あるいは司直が、高い意識を持って対応に当たるよう望むのみです。
日本では、産業廃棄物処理業者による食品の横流し事件が大きく報道されていますが、これなどは恐らく中国では日常的に行われているものと想像されます。
経済活動の至るところで、「ばれなければ何をやっても・・・」あるいは「正直者が馬鹿を見る」といった風潮が蔓延しているように思われます。
地下銀行に対する捜査も、「モグラ叩き」の域を出ないものかもしれませんが、少しでも効果を挙げるよう、関係者の努力に期待したく思います。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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