第194回 日銀バズーカ3の賞味期限と次の注目イベント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第194回 日銀バズーカ3の賞味期限と次の注目イベント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

日銀がマイナス金利導入に踏み切ったことで、年明けからの原油安、人民元安(中国株安)、地政学リスクなどを囃した金融混乱相場の景色が一変しました。冷静に考えてみれば、原油安や中国株安などは、日銀が、追加緩和策を発表したからと言って歯止めをかけられるワケがありません。今後も元安、中国株安が進むリスクは否定できませんし、原油価格も再下落するかもしれません。

マイナス金利政策には賛否あり、デフレ脱却や景気浮揚には効果がないとする見方も。実際にこの政策がどのような成果をもたらすかは誰にもわかりません。そもそも、これまで日銀はバズーカ1,2の政策で「量的・質的金融緩和」でインフレ2%目標を掲げていたのです。当初2%達成の時期を2年以内としていましたが、今回2017年前半へと3度目の達成目標期限の延長を発表しています。バズーカ1,2に自信を持っていた日銀にさえ、将来のことを正確に予測することはできなかったのですから、今、このマイナス金利政策をあれこれ批評し、将来を悲観することは全く意味がないことだと思います。重要なのは、バズーカ1,2発表後はマーケットは素直に反応して株式や為替市場が大きく上昇した、という事実です。そのサプライズ、衝撃を受けての株価やドル/円上昇の賞味期限については考える必要がありますが、少なくともバズーカ発動直後からどこで売るか、を考えるという思考では、大きな値幅を取り損ねるだけです。まずは素直にこのサプライズに乗り、どこで利益を確定するかを考えたほうが大きな成果を上げることができるでしょう。
バズーカ1発表は2013年4月4日でした。5月22日に当時のFRBバーナンキ議長がテーパリング(量的緩和拡大を終了すること)に言及し、世界の金融市場が大混乱に陥るまでの2か月弱は上昇が続きました。バーナンキ氏発言のショックで大崩れとはなったものの、その年の年末には急落前の高値を回復するところまで上昇しています。バズーカ2導入は2014年10月31日。この時の日経平均株価は12月8日まで一か月ほど上昇が続き、その後、原油や天然ガス急落によるルーブル安ショックなどから上げ幅のすべてを失う下落を見せるのですが、その後V字反騰しています。しばらくは乱高下するものの、結局は2015年の20,000円台までの上昇相場へとつながりました。

過去2回のバズーカによる心理的サプライズによる株やドル/円上昇の賞味期限は1~2か月といったところでしょう。その後はまた原油下落や中国株安などの外部要因が日本市場に再び影響を及ぼすことがあるかもしれません。その後の株価やドル/円相場の行方はその時点での「マイナス金利導入」の評価であり、3月のECB理事会やFOMCなどの欧米の金融政策によって変わってくるかもしれません。

日銀がバズーカ3を導入した29日金曜より一足先、21日木曜にはECB理事会にてドラギ総裁が3月の理事会での追加緩和政策の可能性を示唆しており、世界の株式市場、そして原油市場の下落には歯止めがかかっていました。12月のECB理事会で市場の期待に応えることができなかったために、失望されたドラギ総裁の緩和発言ではありますが、カードが残されたままですので3月には本格的な追加緩和策が発表されるかもしれない、という思惑が売りに傾いていたアセットの買戻しに繋がったようです。ただ、実際に導入されたわけではないため、ショートを買戻しはしても新規で株を買うなどの積極的なリスクオン相場にはつながらず、市場は下げ止まったものの気迷い状態でした。そこへ日銀が先に動いたのです。バズーカ3です。市場が予想していなかったマイナス金利導入の発表に売り方は慌ててショートを買戻し買いに回ったのですが、こうなると、3月のECB理事会でドラギ総裁はどう出るでしょうか?新たな通貨安競争の勃発を指摘する向きもあるように、今回ばかりは口先だけで市場を失望させるわけには行かなくなりました。このままでは新たな資金調達通貨は円になってしまい、ユーロは上がってしまいます。さらに3月のFOMCで日欧が新たな緩和競争に入った環境の中で、アメリカは粛々と見通し通りの利上げに踏み切るでしょうか。もし、この環境下で継続利上げを発表すれば、日欧VS米国の金融政策のコントラストがさらにくっきり拡大するために、更なるドル高が進行するリスクがあります。仮に見送れば、リスクアセットは更なる上昇を見せるでしょう。

2月は日米欧の重要金融政策会合はありません。次のマーケットの大転換イベントは3月に集中しています。1月に必要以上に売り込まれたリスクアセットは2月中は堅調に戻ると思われます。次のリスクは3月の日米欧の金融政策。ここでの金融政策競争が新たなトレンドを作るのか、現状のリスクアセット回復トレンドを加速させるかに注目ですね。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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