マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
訪日旅行客を含む中国人海外旅行客が年々急増しているというニュースが頻繁に報じられていますが、為替市場での人民元の下落や、世界各地で発生したテロ事件の影響により、今後は伸びが鈍るとの見方が広がっています。
中国政府の国家旅遊局(日本の観光庁に相当)が発表した推計によると、今年2016年の中国人海外旅行客(香港、マカオへの訪問客を含む)は1億3,300万人、前年比11%の増加と予想されています。
2桁の伸び率ですからなお高成長と言えますが、2012年及び2013年の前年比伸び率がともに18%でしたので、鈍化傾向にあることは否めません。
専門家は、短期的には人民元安が海外旅行の意欲を削ぐと見ている一方、中長期的には、テロへの懸念から「中国国内の方が安全」との見方が広がり、国内の旅行業界にとってチャンスが拡大すると予想しています。
あわせて、業界は観光地や商業施設の設備やサービスを向上させ、また免税店の増設や取扱商品の充実により消費を促す必要があると指摘しています。
日本もテロと無縁という訳には行かないのでしょうが、欧米や東南アジア諸国と比較してより安全との評価が得られれば、今後も旅行先として高い人気を維持できるのではないかと思われます。
中国人の日本旅行と言えば、東京~富士・箱根~京都・大阪の周遊が「ゴールデンルート」と呼ばれ、初めて訪問する客の多くがこのような行程を選んでいました。
最近では、日本に関する様々な情報が広まり、またリピーターも増えたことで、有名観光地や商業エリア以外の場所を訪れる中国人旅行客も増えています。
先日、こちらの英字紙に東京に関する紹介記事が掲載されていたのですが、内容は
(1) 築地市場最後の初競り
(2) 吉祥寺(井の頭公園、サンロード商店街、ハーモニカ横丁)
(3) 重要文化財旧朝倉家住宅(代官山)
の三部構成でした。
築地市場は外国人観光客に大人気ですが、記事では今年の11月に豊洲への移転が予定されていること、移転先の土壌汚染の問題で計画が遅延したこと、さらに移転後の跡地利用の計画などを詳細に伝えていました。
また、旧朝倉家住宅は、東京都民の私も名前しか知らなかったスポットで、目の付けどころに感心しました。
日本の書店には、例えば「パリの路地巡り」等、一般的な観光案内とは違うガイドブックが並んでいますが、中国でも、最新の情報がSNSで瞬時に広まる状況ですので、今後ますます「知られざる魅力」が発掘され、観光客でにぎわうことになりそうです。
今では考えられませんが、1970年代から80年代、日本での海外旅行ブームの頃には、「ロンドン、パリ、ローマ周遊7日間」あるいは「米国西海岸(ロサンゼルス、サンフランシスコ、旅程によってはラスベガスも)周遊7日間」等のツアーが人気でした。
「とにもかくにも行ってきました」という日程です。
その後、リピーターが増え、海外旅行も周遊型から滞在型に、また団体ツアーから個人旅行へと変化を遂げました。
今後、中国人の旅行形態も、同様の変化を見せるものと思われます。多様化するニーズをどのようにすくい上げ、応えていくか、関連業界の創意工夫が求められそうです。
訪日旅行のスタイルからも、「日本を追いかける中国」が理解できます。来週は春節(旧正月)の連休になりますので、再び多くの旅行客が日本を訪れる見込みです。彼らが様々な見聞、経験を得て、日本に対する理解をより深められるよう、望みたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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