マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
年初からのマーケットの混乱で、ドル/円相場は11日木曜日、110円台にまで円高ドル安が進みました。ユーロ/ドル相場も急騰しており、全般「ドル安」の値動きが加速したのですが、その背景にはリスクを嫌ったマネーが米国債へと流れこんだことで、米国長期債利回りが急低下したことにあるようです。市場では2016年の利上げはもう無理だろう、という指摘も出始めており、ドル安相場はまだ始まったばかりだとして更なる円高への警戒が強まっているようです。
では、本当に2016年米国の利上げがないのでしょうか。ドル/円相場は米国の金利動向と高い相関があり、FRBの利上げのペースを予想することは非常に重要なことですが、最終的にはFRBメンバーが決定することであり、それを予想することは大変困難です。そこで市場関係者は、金利先物市場の利上げの折り込み度をウォッチして先行きを予想しています。
FRBがその誘導目標を決定するFFレート(Federal Funds Rate)ですが、今後の利上げの有無だけでなく、足元の相場がそれをどの程度織り込んでいるかを知ることも重要です。
マーケットが利上げを予想している場合でも、実際の相場に既にそれを織り込んでしまったなら、さらにドル買いが起きる可能性は大きくありません。その織り込み度を計るうえで指標となっているのがFFレート先物です。
シカゴCME Groupのこちらのページで確認できます。
http://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/stir/30-day-federal-fund.html
99.625とか99.480などと表記されている数字が「FFレート先物価格」です。先物取引は額面ベースであるため、これを金利に引きなおすためには100から取引価格を差し引く必要があります。
仮に、2016年12月の取引価格が「99.275」(現状の数字とは異なります)なら100-99.275=0.725%となります。単純な引き算ですので簡単ですね。
現在の実際のFFレートが0.5%ですので、先物価格から算出した金利0.725%からその現在のFFレートを引きます。
「0.725%(先物金利)‐0.5%(現在のFFレート)=0.225%」という計算式により、2016年12月には現在から0.225%高くなることを予想しているということになります。
ではこれを、現在市場は利上げの可能性を何%とみているという記事に見られる「利上げ織り込み度」に引き直すためにはどうするかというと、
0.225(先物予想金利)÷0.25(1回の利上げ幅)=0.90.912
0.25%引き上げ(FRBが1回の利上げ決定で引き上げるだろうと市場が予想している金利幅)に対してどの程度の織込み度であるかを計算するには、予想された金利を0.25%で割ればいいのです。0.90.912%、つまり市場は2016年12月までにの0.25%利上げの可能性を90%91%程度の織込んでいる、とみることができるのです。
ここまでは、わかり易いように仮の数字で計算方法をご紹介してきました。実は、実際の数字に置き換えて計算すると年内利上げの可能性はほぼゼロにまで落ち込んでいるだけでなく、マイナスにまで低下していることが確認できます。
2月14日現在の2016年12月のFFレート先物価格は99.56です。
これを金利ベースに置き換えると、
100‐99.56=0.44%です。
現在のFFレートは0.5%ですから、今年の12月は現在よりも金利が低いということを先物市場は織り込んでいる、ということで、これがドル急落の一因であったと考えられます。ただし、この数字は日々動きますので、日々チェックし計算し直さないといけません。マーケットの地合いが変われば、先物価格も大きく変動しますので、マメにチェックして計算してみてください。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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