第197回 イギリスのEU離脱を問う国民投票が6月23日に決定【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第197回 イギリスのEU離脱を問う国民投票が6月23日に決定【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

イギリスのEU離脱を国民に問う国民投票の日程が6月23日木曜日に決定しました。
先週18~19日に開催されたEU首脳会議で注目されていた「イギリスのEU離脱を回避するためにイギリスのキャメロン首相が求めていたEU改革案」を巡っての話し合いでは、EU加盟国の首脳がイギリスのEU残留を全会一致で支持することで合意。キャメロン首相は、EU域内からの移民への福祉制限、EUの競争力強化、加盟国の主権強化など4項目でEU側からの譲歩を引き出すことに成功。その成果をテコに「EU残留」を呼び掛けることになります。その結論が下されるのが国民投票です。

2015年5月の英国の総選挙において保守党は「EUに残留することの是非を問う国民投票を実施する」と選挙公約に掲げて勝利を収めたため、公約によって国民投票は実施しなくてはなりません。

Britain(英国)とExit(出る)を組み合わせた造語Brexit(ブリクジット)問題がポンド相場に大きく影響を及ぼし始めています。2015年前半まではアメリカの次に利上げの可能性が高いとして、利上げ期待から強含みだったイギリスの通貨ポンドですが、経済の伸び悩みとインフレ率低下で利上げ期待は後退、2015年後半からはポンド売りが優勢となってきました。足元では、アメリカの継続利上げに懐疑的なムードが出始めたことで、ドル安となっていることでポンドが買い戻される局面もあったのですが、2月に入ってからはBrexit問題がポンド相場の上値を抑える格好となっていました。

EU離脱派は、EU域内での自由な移動がイギリスの雇用を奪っているほか、複雑な規制が自由なビジネス展開の足かせとなり企業成長を抑制しているとしていますが、ギリシャ危機以降はイギリスの税金がギリシャ支援に使われていることへの不満に加え、新たに大きくなってきた難民問題にも嫌悪感を大きくしています。

しかしEU人口のおよそ10%、国内総生産(GDP)の約20%を占めるイギリスが本当にEU離脱となれば、EUへの悪影響だけでなくイギリス自身にも甚大な影響が及ぶと予想されています。

英国のEU加盟国向け輸出は、およそ 35%と試算されていますが、Brexitとなれば直接投資が止まるとの指摘があります。また多くのイギリス企業が何らかの形でEU市場と接点があり、製造業の業界団体EEFサーベイによると、85%の製造業がイギリスのEU残留を支持しているとされています。

EUには「シングル・パスポート・ルール」というルールがありますが、このルールを持って、イギリスを拠点にEU域内各国で事業を行っていた事業者が多く存在しているため、(EU加盟国以外の国はイギリスに拠点を置くことが一般的のようです)イギリスがEU離脱となってしまうと、EU域内での事業を継続したい事業者は、イギリスからの移転を強いられる可能性が出てきます。シングル・パスポート・ルールとはEU域内のいずれかの国で事業免許や認可を得れば、他の加盟国でも金融商品の提供や支店の設立が認められるというものですが、アメリカや中東からの投資や欧州域内の余剰資金を受け入れ、かつ還流する金融のハブとなっているロンドンに多くある金融機関などがこのルールに抵触することで移転を強いられるとなれば、イギリスにとって大きな痛手となると見られているのです。

アメリカのオバマ大統領は「EUを離脱した場合よりも内部に留まった時の方が、イギリスをより重視するだろう」と発言しており、フロマン通商代表も、アメリカはイギリスと個別の自由貿易交渉を行うことに関心は持たないだろうと発言しています。アメリカとの外交、貿易上の観点から見ても、やはりEUからの離脱はイギリスにとって大きなリスク要因となると見られています。

こうした背景からEU離脱のリスクが高まるにつれポンド下落が加速してきたのですが、週末のEU改革案合意のニュースで国民投票の日程が決定、これを受けてロンドン市長のボリス・ジョンソン氏がEU離脱を支持するコメントを出したことで、ポンドがさらに急落しています。ボリス氏は市民からの高い支持を獲得している人物で次期首相の最有力候補であるとの指摘もあり、ボリス氏のEU離脱支持によってEU離脱の現実味が増したということなのでしょうか。

今後のポンドの動向を見る上では「6月23日」の国民投票が最も大きなイベントとなってきますが、アメリカの年内の利上げがどの程度実施されるのかという観点からドルの動向にも注意が必要です。まずは3月FOMCまではドルの材料に振られやすくドル主体で動く可能性が大きくなると思われますが、FOMCを経過し、ドルがテーマとなって動いた相場に一服感が出ると、国民投票を巡るイギリスの動向などに再度焦点が移ることもあるでしょう。6月の国民投票に向けてはEU残留派と離脱派のせめぎあいがポンドの強弱を占う可能性が高く、こうしたニュースには注意が必要です。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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