第152回 中国でも民泊が急成長中 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第152回 中国でも民泊が急成長中 【北京駐在員事務所から】

自宅の空き部屋や、使用されていないマンションの部屋などに、短期の宿泊者を受け入れる「民泊」が注目されています。
訪日外国人旅行客の急増で、東京など大都市で宿泊施設の不足傾向が顕著となり、また2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、さらなる受入能力の強化が求められていることから、関連する規制の緩和が期待されています。
一方で、既に多くの物件が民泊に供されており、騒音やごみの問題など、近隣住民とのトラブルが発生しているとも報じられています。

日本で民泊の普及を促しているのが、米国の仲介サイトAirbnbとされていますが、中国でもこれを模した仲介サイトが複数営業しており、急速に事業規模を拡大しています。

最大手の「小猪」は、昨年末の時点で中国全土の213都市で物件を仲介しています。
前年2014末の4.5倍だそうです。
利用者は300万人、物件数は7万件に達しています。同社のサイトをちょっとのぞいてみたのですが、私の自宅マンション近くの物件もあり、またマンション、戸建等バリエーションも豊富で、料金も手頃なものから高額のものまで様々です。
利用者にとっては選択の幅が非常に大きいと感じました。

中国では、住宅の所有に様々な制限がありますが、資産運用目的で複数の物件を持つ人も多く、特に20代、30代の若年層では、空室のまま値上がりを待つだけでなく、民泊に供して現金収入を得たいと考える人が増えており、物件の供給増につながっています。
小猪社の創業者は、物やサービスを共同利用する「シェアリング」の考え方が住宅にも広がってきたと指摘し、今後も大都市を中心に物件の開拓を進め、また住宅だけでなく、小規模の店舗なども手掛けていきたいと述べています。
民泊の利用者は、旅行者に加え、出張者、企業のインターンプログラムに参加する学生や、都市部で医療サービスを受ける人々など多様化しており、20代から30代、特にホワイトカラーの人々が多いそうです。

北京で銀行に勤める28歳の女性は、旅行などで不在となる機会に、外国人旅行客に自宅を提供しています。今年の春節も、家族でタイで過ごすため、その間自宅を民泊に供したそうです。
外国人旅行客にとっては、ホテルでの滞在に比べ安価なことに加え、中国人の文化やライフスタイルに対する理解が得られるため評判が良く、過去に滞在した外国人の中には、友人として関係を続けている人も多いそうです。
彼女にとっても、ちょっとした小遣い稼ぎになっており、小猪社のサービスに大変満足しているとのことです。
貸主、利用者の双方が満足できれば、民泊がますます普及し、発展していくものと思われます。

貸主が使用している部屋の短期貸出であれば、管理も比較的容易と思われますが、現在日本で問題となっているケースの多くは、マンションの空室等、貸主が不在で、物件の管理や利用状況の把握が十分でないことが問題の原因となっています。
適正な管理をどのように担保するか、ルールの整備が課題と言えますが、関係省庁や地方自治体、業界関係者等が知恵を絞り、健全な形で市場が発展していくよう、期待したく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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