マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。大発会から波乱の展開にあった株式市場も、ようやくボラティリティが低下してきた印象となってきました。とはいえ、依然として日経平均で1%を超える変動はざらにある状態であり、落ち着いてきたとはまだまだ言い難いのですが。
さて、今回は「外国人(海外)投資家」をテーマに採り上げたいと思います。相場解説などで「外国人の買い」「外国人の売り」といったフレーズを聞かれる方も少なくないはずです。ここでの「外国人の~」というのは、一般に海外投資家を指しているという理解でよいでしょう。現在、東証売買代金における海外投資家の比率はなんと75%にも及ばんとしています(証券会社の自己売買を除くベース)。以前から海外投資家の動向が日本の株式市場の趨勢を決める状況にありましたが、今やその傾向はさらに強まっていると言っても過言ではありません。特に1月以降の不安定な相場展開を考えると、否が応でも「外国人」の動向を注視せざるを得ないのが実状です。しかし、海外投資家と一口に言っても、多くの方は具体的なイメージが湧かないというのが率直なところではないでしょうか。なんとなく怪しい禿鷹のようなイメージや、門外不出で魔法のような投資手法を駆使するようなイメージを持たれている方もおられるかも知れません。今回はその海外投資家の視点をご紹介してみることで、みなさんの投資行動のヒントにしていただければ、と思っています。
まず、海外投資家といっても、同じ人間である以上、摩訶不思議な投資手法を使うようなことはないことを明らかにしておきましょう。もちろん、筆者の知る限りですが(笑)。むしろ、どの投資家も遠い日本の動向に目を凝らし、変化の兆しを逸早く見出そうと真摯な努力を続けているように思えます。そのために、日本の文化や歴史、日本的思考、さらには日本語というものを一所懸命勉強して理解に努めようとする投資家も少なくありません。さらに、時差がある分、リアルタイムで相場に参加できないというハンデも、彼らは背負っています。先入観なしで考えれば、海外投資家には投資に実に不利な要素を数多く抱えている存在なのです。言い換えれば、条件面でそれだけハンデを抱える海外投資家が、にもかかわらず、相場全体に大きな影響を長期間与え続けていると言うことになります。これはかなり変な状況と言えるのではないでしょうか。
こういった状況が継続しているのは、幾つか要因があるように思えます。一つはハンデを補って余りある資金量にあること。世界的なファンドとなればその運用資金は兆円単位のケースも多く、その一部が日本に向けられただけでも市場に相当のインパクトを与えてしまう、という構造です。これはよく海外投資家の影響度を解説する際になされる説明でもあります。しかし、これだと短期的な影響は説明ができても、市場に影響を長期間与え続けることの説明にはなっていません。もちろんこれも一因ではありますが、本質はもっと異なる点にあるように思えます。そこに海外投資家のカギがあると考えるのです。
筆者は、海外投資家の思考プロセスをその要因に挙げたいと考えます。少なくない海外投資家は、例えば日本語など日本発の情報に過度に頼らないスタンスにあります。当然、日本株に投資する以上、日本発の情報が重要であることは議論のないところですが、それではリアルタイムで市場に参加している国内投資家に勝てるはずはなく、ハンデはハンデのまま温存されることになります。そこで海外投資家はミクロの情報と同等、もしくはそれ以上によりグローバルな視点に重点をおいたマクロアプローチに重点を置く傾向があるように思います。例えば、海外の変調をきっかけとした1月以降の波乱相場は、日本発の情報に頼っていただけでは対応が遅れた可能性は否めません。海外投資家の動向が時として「謎めいて」見えてしまうのは、国内投資家から見ればこういったむしろ虚を突かれた格好となるため、でしょう。しかし、日本から遠く離れ、そこから受け取る情報量にも限界があるからこそ、そういった発想をせざるを得ず、またそれを可能としているのだ、とも言えます。
先日、ある企業経営者と会食の際に興味深い言葉を聞きました。曰く、「便利さは人間を堕落させる」と。海外投資家はハンデを抱え不便を甘受しているからこそ、新たな発想で特色ある投資手法を展開しているのかもしれません。逆に、情報がリアルタイムでふんだんにあり、言語的な障壁もない我々は、どうしても目先の情報や市場動向に振り回されてしまいがちでもあります。こういう時こそ、一歩下がって冷静に市場を俯瞰することが重要なのかもしれません。
コラム執筆:長谷部 翔太郎
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