マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国を旅した人の体験談などに、しばしば「トイレで苦労した」と書かれているのを目にします。
大都市や観光地では、公衆トイレは一応整備されているものの、清掃が行き届いていない、紙が備え付けられていない、あるいは個室のドアなどの設備が壊れていることが日常茶飯事です。
また、都市部を外れますと、観光地を除けば公衆トイレそのものがなく、時には「大自然の中で」等の経験を強いられることになります。
中国政府の国家旅遊局(日本の観光庁に相当します)は、観光振興のためには公衆トイレの整備が重要との考えから、このほど国としての基準を定め、あわせて、本年末までに、観光地、交通ターミナル、レストラン、娯楽施設や商業施設のトイレの過半を、この基準を満たすよう整備するとの目標を設定しました。
新たな基準では、待ち時間10分以内や夜間の利用可などの4項目を最低条件とし、これに加えて待ち時間の短縮や便座シートの常備、BGMの提供など追加条件の充足により、AからAAAまでの3段階の格付が与えられます。
AA格あるいはAAA格取得のためには、携帯電話の充電設備やWi-Fiサービスの提供が求められており、利用時間、さらには待ち時間が長くなってしまうのではと心配になります。
新聞記事に掲載された市民の声も、女性用トイレの不足で待ち時間が長いこと、あるいはハンドソープやドライヤーの設備がないことへの不満が述べられており、今回策定された基準を見ますと、政府の視点が利用者のニーズからずれているようにも思われます。
もっとも、設備が清潔でない、あるいはしばしば破損している等の問題は、多くが利用者の側に起因するものでもあります。設備の改善やサービスの向上に加え、利用者の意識、モラルの改革も求められるところです。
中国政府は、昨年1月より、公衆トイレ33,000ヶ所の新設と24,000ヶ所の改修を行う三ヶ年計画を進めています。
今年は125万元(約2,200万円)を投じ、25,000ヶ所の新設あるいは改修を行う予定です。
中国では、これまで公衆トイレの整備については重視されてきませんでしたが、観光地や各都市が集客に力を注ぎ、競争が激しくなる中で、トイレの数及び質が重要との意識が高まりつつあります。
国家旅遊局の担当者は、中国のトイレの質は向上しているものの、日本など諸外国との比較ではまだかなり劣後しているとし、今後はトイレの管理を民間業者に委託し、例えば広告媒体としての利用も進めたいと述べています。
施策が功を奏し、旅行客の満足度が向上するよう、願いたいと思います。
北京の中心部では、公衆トイレが至るところにあり、数的には十分な状況ですが、管理の程度はまちまちで、利用をためらうものも多いのが現状です。
私も、外出時にはホテルなどの施設を利用することが多いです。
赴任前、友人から「トイレには注意」との助言を多く受けていたのですが、北京にいる限りでは、多少の注意を払うことで問題なく過ごすことができます。
ただ、地方を旅した友人からは、様々な苦労話を聞かされています。
それらも、時が過ぎれば良い思い出になるのでしょう。
先進国と発展途上国の両面が見られる中国ですが、こと公衆トイレに関する限り、まだまだ発展途上で道のりは長いと考えざるを得ない話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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