マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。年度末となる3月に突入しました。株式市場は相変わらずピリッとはしませんが、ようやく落ち着きを見せてきた印象です。そういった中、注目はなんといっても期末の株価になります。期末は配当権利確定という要因もあり、一般的に株価は上がりやすい環境となるため、です。ちなみに、昨年度期末の日経平均は19,206円、昨年9月末は17,388円でした。これを上回れるかどうか、が相場の力強さを示す一つの指標になるのではないか、と考えています。
さて、今回取り上げるテーマは、「AI(人工知能)」です。昨年末、野村総合研究所が「10~20年後に国内で働く人の49%の仕事がAIやロボットで代替可能となる」との研究結果を発表しました。約半分の仕事が(人間から見れば)消失するという衝撃的な報道をご記憶の方も多いかと思います。実は、同様の試算はそれ以前からなされており、既に「2045年問題」(ムーアの法則を基に、2045年にはコンピューターの性能が人間の脳を超える)として指摘されています。これらの予測、試算が正しいかどうかは別にして、乗用車の自動運転や自動掃除ロボットなど、様々な分野でAI化は着実に進展していることは確かなようです。投資業界においても、アルゴリズムを活用した手法が数年前から一定の市場シェアを有するようになっています。こういったAI的なアプローチはいつのまにか実際の生活の中で一定の立ち位置を占めるようになってきていると言えるでしょう。
しかし、約半数の仕事がなくなる(可能性がある)世界というのはどういった状況でしょうか。少なくとも相当の価値観の転換が起こることを覚悟しなければならないのではないか、と考えます。当然、そういった予測は株式市場にも漸次織り込まれていくことでしょう。これらはかなり息の長いテーマになるものと予想します。おそらく、まずはAIの生産に直接関与してくるIT産業や電子機器関連が、次いで、AI化に伴う生活様式や価値観の変化に関連する企業・産業が、その主たる対象になっていくのではないでしょうか。残念ながら、後者の具体的なイメージは現時点でまったく想像もつきません。かろうじて前者の方のイメージは湧きますが、こちらもそこで主役を演じる銘柄は、これまでとは異なる企業群となる可能性があると考えます。例えば、世界に君臨する自動車メーカーを押し退け、電気自動車を擁して彗星のごとく出現したテスラモーターズのように、です。テーマが大きいだけに、先入観は極力排除して考えたいところでしょう。
また、視点を変える必要もあります。約半数の仕事がなくなる可能性がある、ということは、約半数の仕事はそれでも残る、ということでもあるはずです。残る仕事は、それだけ付加価値を有しているとも言えるかもしれません。当然、それらは有望な投資対象になる公算が大きいと考えます。では、いったいどんな仕事が機械に置き換わることがないと予想できるでしょうか。こういった問いには、「判断力が要求される分野」、「知覚的な認識が求められる分野」といった回答がよくなされます。しかし、既に自動運転が現実化し、医療行為なども機械化が進んでいるというのも事実です。現実の変化はこういった予想回答を遥かに越えて起こる可能性が高いと考えるべきでしょう。機械化できない分野は、実は存在しない、と考えておくべきかもしれません。
それでも機械化されない分野があるとすれば、「感動を与える産業」になるのではないか、と予想します。これもパターンニングをつぶさに分析すればAIで対応可能になるのかもしれませんが、人の感情は如何にAIが学習機能を有していたとしてもやはり計算できるものではないように思います(否、むしろそうであって欲しいというのが率直なところかもしれません)。では、どういった分野が感動を与える産業となるのでしょう。映画や文学、絵画といった芸術分野は容易に想像できるとして、おそらくは日常的な商品デザインやきめ細やかなサービスといった領域においても「感動」は与えられるはず、と考えます。とすれば、投資の世界でもこれまでは最新性能や高機能が注目されてきましたが、より感情に訴えかけることのできる企業への注目度が増してくるというシナリオもあながち突拍子もない話ではないように思えます。実際、そういった捉えられ方をしている企業は既に少なからずあります。読者の中には幾つか思い浮かぶ銘柄もあることでしょう。感情への訴求力は定量的に測ることはできず、だからこそ機械化はされないということになるのですが、2045年頃にはそれが重要な投資指標になっていると想像してみるのも一興かもしれません。
コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。
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