マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国の都市部では、病気で医師の診察を受ける際に、大学病院など大きな施設が好まれる傾向があります。
そのため、大病院では毎日早朝から診察の順番を待つ患者や家族が長い行列をなし、朝から並んでも受診できるのは夕方などということが日常的に発生しています。
冬場、空気が悪くなりますと、子供を中心に風邪あるいは喘息の患者が増え、待合室が足の踏み場もないほどの混雑になります。これでは快復のためには逆効果ではないかと心配になってしまいます。
日本でも、「まずはかかりつけ医の診察を受け、必要あれば紹介状を携行して大病院での受診を」ということで診療報酬制度の改正が行われていますが、中国の「大病院信仰」は根強いものがあり、患者、家族、医師や病院関係者に重い負担が生じています。
このような状況を改善しようと、北京市が所管する主要22病院は、年内に急患以外の患者に対し、病院での診察受付を廃止し、ウェブ、スマホ、電話あるいは院内に設置された端末を用いて事前に予約を行った上で来院するよう求めることを発表しました。
今後、患者に事前予約の取得を促し、徐々に移行を図る計画です。
年末までには、来院する患者の75%が、予約を取得した上で来院することになると見込まれており、混雑の緩和と待ち時間の短縮に、さらにはやみくもに大病院で受診することの抑制につながることが期待されます。
事前予約制への移行については、昨年6月より小児科病院で先行して実施されており、毎朝の順番待ちの人数が以前に比べ18%減少しているそうです。
以前は、順番待ちのために患者や家族が徹夜で列に並ぶ等の状況にあったとのことで、異常な状態が多少なりとも緩和されています。
また、患者や家族に代わり順番待ちの列に並び報酬を得る「順番待ち代行業者」が横行し、患者らの不満が高まっていましたが、これも実名制による事前予約の徹底で問題解消に向かうと期待されています。
先行事例となっている小児科病院でも、まだ多くの患者が来院当日に診察の申込を行っており、全面的な移行にはなお時間を要する状況ですが、今後は人民解放軍など、北京市以外の組織下にある大病院でも、同様のルールが導入される見込みです。円滑な移行が実現し、患者をはじめ関係者の負担軽減がもたらされるよう、望みたいと思います。
中国では、大病院信仰に加え、医師や病院関係者へのコネの有無や付け届けの多寡により、診察時の対応に差が生じると言われています。生活の基本となる健康管理にさえ、厳しい競争が存在するのですから、裕福でない一般市民にとっては大変です。
事前予約制も、どの程度定着するものか、今後の推移を見守る必要がありますが、必要に応じて適切な診療が受けられるよう、医療関係者の努力に加え、患者や家族が「自分たちだけは良い治療を・・・」という意識を改めることも必要です。今後も様々な点で改善が求められます。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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