第200回 豪ドル上昇は本物か?!ここからのポイント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第200回 豪ドル上昇は本物か?!ここからのポイント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

豪ドル/米ドル相場は1月半ばに0.6826ドルまで下落、この水準はそれまでの最安値水準であった昨年2015年9月の0.6908ドルを下回っており、テクニカルの定石で言えば更なる下落があって不思議はなかったのですが、よくよく月足チャートを見てみると、この0.6830ドル水準というのは2001年までの豪ドルの下落相場において1999年に何度トライしても上抜けることができなかった上値抵抗ラインであり、2002年より上昇トレンド入りした後には、2003年相場の上値抵抗ラインでもありました。この抵抗を抜けた後の2004年、今度はこのレベルが下値をサポートしており長期的に見れば重要な節目となってきたポイントであったことが伺えます。

長期チャートでテクニカル的には不思議とポイントとなってきた0.6830ドル水準で下げ止まってから、豪ドルは反転上昇して来ています。200日移動平均線を上抜け、昨年夏からの長いレンジ相場の上限であった0.7380ドル水準をも上抜けてレンジを上方ブレイク。しっかりとした上昇トレンドに入ったかに見えます。2011年7月に1.1079ドルで天井を付けてから実に4年半もの間下落が続いた豪ドルにどのような変化が訪れたのでしょうか。

①米利上げ観測で売られてきた商品価格の反発

豪ドルが明確に天井圏のもみあいを下に放れて下落を始めたのは2013年5月。米国の元FRB議長バーナンキ氏がテーパリングを示唆したことによるリスク資産の暴落で、高金利通貨も一斉に下落しました。それまで量的緩和策として米国債やMBS(住宅ローン担保証券)の購入を続けてきたものを縮小すると示唆しただけでしたが、これをきっかけに米国から世界中に投資されていた資金の逆流が始まったのです。高金利通貨からの資金の引き上げと同時にゴールドなど商品関連銘柄からも資金が流出。2014年テーパリングが完了すると今度は米国の利上げ観測がリスク資産からの資金流出を加速させましたが、2015年12月、米国が実際に利上げを実施したことで、材料出尽くしとなった可能性が指摘されています。足元では米国利上げはこれまで予想されてきたよりもゆっくりとなるとの見方が増えてきており、これまで長期に続いてきた米ドル高是正につながっていることから、資源、商品関連銘柄が上昇、高金利通貨の上昇となっているのです。

②中国リスクの一服?!

オーストラリアの輸出の20%が鉄鉱石でありGDP全体に占める鉱業の割合は10%程度です。そのうち4%が鉄鉱石輸出によるものとされていますが、この鉄鉱石価格が急反発となっています。最大の貿易相手国である中国の景気減速で下落が続いていた鉄鉱石価格ですが、3月5日から開幕した全人代の「第13次五カ年計画」で景気底入れを目標とした措置を強化する方針が示されたことで、鉄鋼需要の見通しが引き上げられました。鉄鉱石価格が急反発となっているほか、原油などの商品価格も反発基調となっており、国際エネルギー機関(IEA)は、原油相場が底打ちした可能性を指摘しています。資源、商品価格の底入れ観測は豪ドルにとって大きな上昇要因となってきます。また、先週、中国人民銀行(中央銀行)が元の中心レートをここ4カ月で最も大きく引き上げました。これを受けて豪ドルが上昇する展開となっています。人民元切り下げからスタートした2015年のチャイナショック、そして中国リスクも全人代開催中は中国政府の面目を保つ方向で落ち着きを見せているという印象です。

ここからの豪ドルのポイントは、米国利上げのペースと中国情勢(商品価格)。その意味では今週16日のFOMCを受けての米国金利動向は非常に重要ですが、奇しくも同日全人代が閉幕するタイミングと重なるのが興味深いところ。また、20日にはロシアにて産油国が原油増産凍結を話し合う会合が予定されているとして、市場の関心が高まっていますが、経済制裁を解かれたばかりのイランの参加が難しい状況で、この会合が失望に終わるリスクもささやかれています。足元では原油価格、中国市場の安定が崩れないことが豪ドル上昇の最大のポイントとなってきますが、テクニカル的には底入れしたように見えますので、こうしたイベントリスクによって大きく下落することがあれば丁寧に拾っていきたいと考えています。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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