第201回 年度末のドル円相場~レパトリとドレッシング買い思惑 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第201回 年度末のドル円相場~レパトリとドレッシング買い思惑 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

3月も今週来週と後2週間を残すところとなりましたが、国内企業の2016年度の想定為替レートの決定が遅れているのだそうです。3月は、4月スタートの翌年度の経営計画を立案する時期ですが、2016年は年初からドル/円相場のボラティリティが高く、1~3月までの間に10.72円も円高に振れており先行き不透明となっていることが背景にあると見られます。想定為替レートについては、3月8日のコラムを参照ください。

『第199回 3月本決算、意識される企業の想定為替レート』

12月日銀短観によると、2015年度の企業の想定為替レートは、大企業・製造業1,091社の平均で119.40円だった、と8日のコラムでご紹介しましたが、この3月のドル/円相場は円高圧力が強く、その後110円台まで円高ドル安が進んでいます。3月末の年度末決算時の為替水準が非常に大切ですが、現状のドル/円相場が2015年の想定為替レート平均よりかなり円高水準となっていることが株式市場でも嫌気されています。市場には、アベノミクス・日銀による金融政策によって押し上げられてきた円安ドル高のトレンドが終焉するとの見方が広がりつつありますが、その一方で米利上げ予想を背景としたドル強気見通しも残っており、先行き見通しが分れてしまっているのが現状です。今後のドル/円相場をどのように見ればいいのでしょうか。

年度末決算期に向けては円高バイアスが強まるとされています。日本の輸出・輸入企業や銀行、生保など機関投資家の年度末決算も3月が多いため、決算の着地に向けてのドル買いやドル売りなどが出るため特殊な値動きとなりやすい時期でもあります。例えば企業や機関投資家らは1年間の総決算を締める期末になって想定外の損失が出ないように、3月期末の株価水準を予想しながら保有株式の評価や株式運用の成績の確定などを活発化させるために、株式市場では利益確定や損失確定のための売りが出やすくなります。株が下がりそうだと見れば、利益があるうちに確定しておこうとしますし、損失が拡大しないように手仕舞うという動きが出やすくなるということですね。株価が弱含みで推移している場合、こうした売り圧力が膨らむことで、年度末に向けてさらに株安が進むという悪循環となることも考えられます。株安が進めばドル/円市場では円高圧力となってしまいます。

また、日本の投資家が海外の株式、債券などの資産に投資した資金を決算に向けて日本に戻す動きも活発化します。これをレパトリエーションと呼びます。例えば、米国の株式や債券に投資していたものを換金し、日本に送金する動きが活発化すればドル売り円買いの圧力が大きくなりますね。こうした値動きは早ければ1月下旬くらいから出てくるとされていますが、正確な統計はありません。しかし、今年は日銀がマイナス金利導入を発表した1月29日の121円台のドル高円安を最後にドル/円相場は円高進行となっています。ドル/円相場が上昇したタイミングでは、保有株式の売却に伴う円高圧力やレパトリによる円買い圧力に押された結果の円高であった可能性も大きいと思われます。
しかし、決算期末には株式市場にはドレッシング買いという買い圧力も増すと言われています。
ドレッシング買いとは「お化粧買い」とも呼ばれ、ファンドなど運用機関が運用評価をよく見せるために、決算期末に運用対象である株式などに買い注文を入れることをいいます。特に年金基金や投資信託などを運用するファンドは、月末や決算期末の成績で評価されるため、それらの運用を受託している投資顧問会社や投資信託委託会社、ヘッジファンドなどは、顧客からの運用成績への評価を得るために、その時価評価額を上げておく必要があるのです。年度末は、損失を出したくないという思惑から株価が高くなれば利益確定が出やすい反面、あまりに株価が下がってしまうと運用評価に響くとして株価を吊り上げようとする動きが出る特殊な売り買いが交錯します。株式市場の動きはドル/円相場にも大きな影響を及ぼします。3月残すところ2週間、深押しすることがあれば、その後月末に向けては猛烈に買い戻されるというような、ボラティリティの荒い値動きとなるかもしれません。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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