第157回 中国に定住し就労する外国人が増加 【北京駐在員事務所から】

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第157回 中国に定住し就労する外国人が増加 【北京駐在員事務所から】

大気汚染や物価上昇の影響により、北京の在留邦人はここ数年減少傾向が続いています。
特に、子女の健康についての不安から、駐在員の家族の帰国が増えており、日本人学校の児童・生徒数の減少や、日本人向け賃貸マンションで、家族向けの大型の住戸に空室が増えていることなどが、頻繁に話題になっています。
理由、背景は様々なのかもしれませんが、日本料理店の閉店や、明らかに中国人をターゲットにしたと見られる改装、業態転換も数多く目にします。

北京の日本人に関しては、このようにいささか淋しい状況ですが、中国の大都市では、経済成長で就業あるいは収益獲得の機会が増加するとの期待から、定住外国人が増加しています。
中国企業及び人材の海外展開、国際交流を専門とするシンクタンク"Center for China and Globalization"(CCG)によると、2000年から2013年の間に、北京に就労目的で定住する外国出身者は50%以上増加し、現在、市全体の人口の0.5%程度を占めているそうです。CCGは、定住外国人の増加傾向は上海など他の都市でも見られると指摘しています。
もちろん、この比率は、先進国の主要都市や、移民の受入を積極的に進めている国の都市に比べれば遥かに低い水準ですが、政府が更なる経済成長のために、外国人あるいは外国出身者の受入を拡大する方針に転じていることから、今後さらに上昇することが予想されます。
政策変更の具体例としては、特に優れた技能を有し、中国への貢献が見込まれる外国人に対し、就労ビザあるいは永住ビザの交付の条件が引き下げられると伝えられています。

中国では、定年退職となる年齢(男性60歳、女性は50歳または55歳)との関係で、これまで、60歳以上の外国人が就労ビザを取得することは困難でした。しかしながら、先日北京で開催された就労ビザの申請、交付の手続に関する説明会では、当局の担当者より、「個別の審査により交付される場合もあるので、相談して欲しい」との発言があり、政府の姿勢の変化が確認される形となりました。

成長が減速しているとはいえ、経済の規模が大きい中国の大都市は、地方からの出稼ぎ労働者だけでなく、外国の人材にとっても、魅力的な存在となっています。
現在、ビザの審査及び交付の業務は、警察機構や中国人の戸籍管理とともに、政府の公安部が所管しており、管理、統制の観点が強くなっていますが、CCGの担当者は、増加する外国人の流入に対応するため、専門組織を設けるべきと主張しています。組織形態は一つの象徴ですが、政府が外国人の受入と、中国経済あるいは社会の中での位置づけをどのように考え、取り組んで行くのか、今後の変化が注目されるところです。

日本でも、ITの分野でインドからの人材が数多く就労していますが、世界では、科学技術の分野を中心に、優秀な人材の奪い合いが起きていると伝えられています。
中国と同様、日本でも特に優秀な外国人を対象に、永住ビザの発給条件を緩和する方向と伝えられていますが、家族、特に定住者の子や孫をどのように処遇するのかなど、問題も少なくありません。
特に、中国では公には宗教活動が認められていませんので、様々な信仰を持つ外国人との間に、今後軋轢が生じることにならないか、心配もされるところです。

欧州で深刻さを増す難民問題とは背景、状況が異なるとは言え、外国人、外国出身者との共存は今後ますます必要となる半面、必然的に生じる問題もあります。
日本も、また中国も、「外国人との共存共栄」を実現し、経済成長の原動力の一つとできるよう、政策に加え、市民レベルでの理解が求められます。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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