マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。昨年度末は結局、配当取り相場も盛り上がらず、9月末の水準をも下回る結果となりました。2月初めの底が抜けるような恐怖感はもはやありませんが、依然として燻っている印象は拭えない状況が続いています。景気もあまり芳しい様子ではなく、株式市場では2016年度の企業業績に対してもかなり慎重な見方が浸透してきました。アベノミクスの4年目となり、息切れ感は否めません。膠着感を早期に拭い去るためには、何がしか大きな材料が欲しいところです。
さて、今回は、「米大統領選挙」をテーマに採り上げてみたいと思います。これは、昨年末にリストアップした「相場のテーマとなるであろう2016年に予定されるイベント」の中でも触れていたテーマです。当時は筆者も「(予備選段階では色々な観測や憶測が跋扈するが)最終的には予定調和的な結果となる。相場のテーマは『誰がなるか』というよりも、『新政権の政策』になる」と考えていました。しかし、予備選が始まるまでは「過激な言動は注目を集めても所詮は徒花(あだ花)」的な見方をされていたドナルド・トランプ氏が予備選を快走。共和党の大統領候補として選出される可能性も無視できない状況となってきました。まさに「誰がなるか」(もちろん、その結果としての「新政権の政策」への注目も含めて)が俄然注目ポイントに浮上してきたと言えるでしょう。本選挙の行方を予想する段階にはまだなく、筆者も「誰がなるか」を論じられる立場ではありませんが、この「トランプ旋風」を見る限り、氏の言動や主張が米国民からある程度支持されていることは事実のように思えます。当然、このことは今後誰が大統領に選出されようと、少なからず政権運営に影響を与えると考えるべきです。そして、氏の快走が続けば続くほど、その影響力は否が応でも大きくなってくるはずです。
とはいえ、世界の株式市場がその変化を織り込み始めたようにはまだ思えません。現在は予備選前半戦でもあり、上記のような観測は気が早すぎる、という心理もあるでしょう。しかし、それが現実のものとなってからでは投資タイミングを逃してしまうリスクが否めません。確かに気は早いのかもしれませんが、そうなったときのシミュレーションをしておき、備えとしておきたいと考えます。
トランプ氏の主張の本質は、孤立主義的、保護主義的な点にあるように筆者は思います。これは、圧倒的な軍事力を背景に世界政治に関与してきたこれまでの米国のスタンスからは方向が異なるものであり、現在主流となっている「経済のグローバル化」という流れからも一線を画す思考と位置づけられるでしょう。現在のトランプ旋風がこの主張への国民の支持を示すものだとすると、そのマグニチュードはさておき、実際の政権運営にもそういった視点が徐々に反映されていくと考えるのは自然でしょう。大局的には、米国はこれまでの在り方に変化が、延いては世界の政治経済においても変化が生じてくる可能性が俄然出てきたと判断せざるを得ません。
特に、米国は世界最大の貿易輸入国である以上、その米国が保護主義的政策への傾斜を強めれば、世界の貿易市場には相当な影響が予想されるのではないでしょうか。米国にとって最大の輸入国は中国、カナダ、メキシコ、日本といったところですが、こういった国々で対米輸出の変調があれば、経済面での影響は無視できないと考えます。世界第二位のGDP規模を持つ中国ですら、対米輸出金額はその5%程度もの規模に匹敵するのですから。もちろん、ある日突然の貿易停止想定は非現実的ではあるのですが、変化の兆しが明らかとなれば、その影響(あるいは懸念)を相場は織り込み始めることも事実です。現実的な落とし所が見えてくるまでは、不安定な相場展開になりやすいのではないかと想像します。また、米国で孤立主義的動きが増した場合に至っては、世界の地政学的リスクへの影響も予想されます。いずれにしても、米国のスタンスの変化は投資の世界においても無視できない影響を及ぼすと考えるのです。
頻繁なテロの発生、北朝鮮の「水爆開発」、中東や南シナ海における緊張感の高まりなど、世界情勢が近年ないほどに混沌としてきた印象は拭えません。今年は世界的な選挙の年でもあり(米大統領選もその一つ)、日本でも国政選挙が予定される中、それも先行きを見通し難くしているように感じます。こういった時こそ、いろんなケースに備えてのシミュレーションがより重要になってきたと考えます。「備えあれば憂いなし」といったスタンスを肝に銘じて。
コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。
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