第203回 世界の外貨準備と為替相場~ユーロ比率は6年連続低下【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第203回 世界の外貨準備と為替相場~ユーロ比率は6年連続低下【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

国際通貨基金(IMF)が3月31日、「10-12月期の世界中央銀行の外貨準備構成」を公表しました。世界の外貨準備に占める米ドルの比率が第3四半期~第4四半期と2四半期連続で上昇した一方、ユーロの比率が約14年ぶりの低水準に落ち込んだことがわかりました。

2015年第4四半期のドルの比率は64.06%(4兆3,600億ドル)。2014年の第4四半期は62.9%でしたので、外貨準備におけるドル比率は1年を通じても上昇しています。一方、2015年第4四半期のユーロの比率は19.91%と、前四半期の20.34%から低下。低下は8四半期連続。ユーロの比率のピークは2009年につけた28%でした。

為替チャートを見てみますと、ユーロ/ドル相場は10月15日の1.14944ドルを高値に12月3日のECB理事会まで下落トレンドが続いていました。ユーロ安、ドル高。この期間の世界の外貨準備のリバランスも為替相場に影響があったのかもしれませんね。

世界の外貨準備高はIMF発表では2014年末でおよそ1,400兆円あるとされています。最大の外貨準備高を誇るのは中国。現在、減少傾向にあるとはいえ、中国の1月末時点の外貨準備高は3兆2,300億ドル(およそ340兆円)にも上ります。各国の中央銀行が自国通貨だけでなく外貨を保有する目的は ①対外債務の返済 ②輸入代金の決済③通貨の安定のための介入原資、などがあります。米国と取引があれば、米ドルで支払い、返済しないといけないわけですから、外貨準備で米ドルを保有しておくということです。

この外貨準備高、通貨当局による為替市場への介入が行われることで増減します。為替市場で急激に自国通貨が高くなることで、貿易条件が著しく悪化するような局面では「自国通貨売り、外貨買い」という形での介入が行うことがありますが、自国通貨を売却して外国通貨を購入するために外貨が増えていくということです。昨今、世界的に通貨安競争の様相を呈していますが、介入という直接的な手段での通貨安誘導はしないようにとG20でも共同宣言で合意がされていますので、やりにくくなってきています。

また、外貨準備資産の目減りを防ぐために、今後上昇すると思われる資産を増やし、下落すると思われる資産を減らすという「リバランス」も行われます。そのタイミングや戦略は国によって異なりますので、正確なポートフォリオを把握するのは難しいのですが、今後欧州にリスクがありユーロが下がると考える国が多ければ、世界の外貨準備高の欧州債券、ユーロの比率は低下しますね。こうした中央銀行の外貨準備のリバランスがマーケットにも大きな影響を及ぼすのです(特に中国の外貨準備高は大きいため影響が大きいとされています)。

また保有する外貨建ての債券価格が上昇(金利は低下)した場合も、外貨準備高が増減します。預金として単純に通貨で保有していた場合は、ドル高になれば、ドルの保有比率が上がりますし、ドル安となればドルの保有比率が下がるといった具合に、価格変動によって保有比率が変わるということですね。 ユーロの保有比率は2009年をピークに下がり続けているのですが、今回の比率低下は、中央銀行によるユーロからドルへのシフトというようなリバランスではなく、単純にユーロが下落したせいで、おのずと比率が低下しただけかもしれません。しかし、マイナス金利であるユーロを保有し続けるのは外貨準備高そのものが減少するリスクでもあるため、いずれ金利が上がる米ドルにリバランスしたほうがいいと考える国が増えれば、ユーロはさらに売られるということになりますが・・・。
足元では、ユーロは大変強い動きとなっていますね。為替の変動要因は外貨準備のリバランスのみに支配されているわけではないのですが、金額が大きいためマーケットへのインパクトも大きいということを覚えておきましょう。ユーロは6年連続で外準比率が下がっているという大きな流れがあることを。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount

@hirokoFR

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧