マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
2016年4月、新年度入りからも日本市場が大荒れとなっています。4月は日本企業の年度初めということで、ニューマネーが市場に流れ込むとした期待がアノマリー的に語られますが、1994年からの過去21年の4月のドル/円相場を検証すると、月初から月末にかけて一貫して同方向に動いたのは2002年の円高時と2004年と2012年の円安進行時のたった3回しかありません。4月新年度のドル/円相場はトレンド化しにくいのです。前述以外の年のドル/円相場は、月初円高であれば下旬から円安へ(あるいはその逆)に動いた年が7回。方向がなく結局はレンジ相場だったケースが7回、月初こそトレンドができそうな値動きでスタートしたものの、その後膠着して値動きがなくなったケースが3回ありました。今年2016年4月は現状の値動きでは明らかな円高です。4月1日112円台でスタートしたドル/円相場は4月7日に107円台を示現、わずか5営業日で5円もの円高進行となっていますが、4月はまだ3週間ほどあります。この4月、このまま一貫した円高トレンドとなるでしょうか。
何故4月のドル/円相場が一方向のトレンドになりにくいのでしょう。これは年度末から新年度入りというカレンダーの節目においての本邦機関投資家勢の動きが深く関係していると思われます。期末の本決算に向けては株式市場では「ドレッシング買い」という特殊な買いが入りやすい地合いとなります。企業や投資信託、年金基金などの機関投資家は決算期の終値価格で成績が評価されるため、評価をよく見せるために決算期末や月末の権利落ち日、権利落ち日翌日の大引けにかけて買い注文を入れて時価総額を上げようとします。運用成績をよく見せようとするこの動きは「お化粧買い」とも呼ばれています。これが3月末に向けての株価上昇を促すことで、株価との相関の高いドル/円相場も円安に動きやすいという特徴がみられるのですが、新年度に入ると一転して機関投資家勢は株を売りに回ります。こうした動きを「期初の益出し売り」と呼びます。期間収益が評価対象として重視される機関投資家やファンドマネジャーの心理的要因によるものですが、要するに新年度入りの早い時期に保有株を売却し当期の利益を一定度合い確保しておくことによって、年度後半に向けて気持ちに余裕を持ちたい、ということのようです。期初、最初の取引がマイナススタートだとそれを取り返さなくてはならないという焦燥感が生まれますが、期末に買い上げることによって利益になった株を期初に売って利益確保し、プラス収支でスタートできれば余裕ができますね。これを本邦機関投資家勢が一斉に行えば、相場への影響もそれなりに大きくなってきます。今年もこの「期初の売り」が出ていた、という指摘がありました。それに加えて、海外勢の売りが続いたことも2016年4月期初相場の下落に拍車をかけたものと考えられます。
では、期初売りが一巡した後はどうするのでしょうか。
実は、日本の企業や機関投資家勢が本格的にマーケットに参入してくるのは例年4月の第2~3週と言われています。まずは様子を見てから、ということでしょうか。例年、新年度の相場の動きを確認してから動き出すことが多く、会議を重ねてその方向性を決定して本格参入するのが4月中旬以降になるのですが、4月中旬から後半になると今度は本邦勢はゴールデンウィークという長い休暇を意識しなくてはなりません。(長い休暇に海外旅行に出かける個人によるドル買いも旺盛になるとも言われていますが、必ずしも例年5月に向けて円安になるというものではありません。)また、米国にはSell in Mayという格言があり、5月に向けては米株下落への警戒が強まるということで、月中から下旬に向けては、ポジションの整理が起こりやすくなるため、4月は大きなトレンドを生みにくい神経質な値動きになりやすいのでしょう。
今年は4月期初から一気に5円もの円高スタートとなりましたが、過去の値動きを教訓とするならば、下旬に向けて尚そのトレンドについて行くのが賢明とは思えません。月初~中旬までの値動きと月後半の値動きが異なるケースが多い4月のトレードは、月初に生じたトレンドのダマシに気を付けたいところです。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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