第160回 地震発生後の中国政府の対応 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第160回 地震発生後の中国政府の対応 【北京駐在員事務所から】

熊本及び大分での地震は終息の気配が見えず、人的、物的被害が拡大しています。
犠牲となられた方のご冥福をお祈りし、あわせてご遺族、負傷者ならびに被災者の皆様に、心からのお悔やみならびにお見舞いを申し上げます。

九州は中国から近いこともあり、近年中国人観光客が増加しています。
クルーズ船で博多や長崎に寄港し、短時間で観光と食事、買物をすませて離日というパターンも多いのですが、桜島や阿蘇山、さらには湯布院温泉などを周遊する旅行客も増えているそうです。

先週の地震発生時は、桜の時期を過ぎ、また中国の祝日清明節(今年は4月4日)と労働節(5月1日)の狭間ということで、観光客が一時的に少なくなる時期でした。16日(土)未明の本震発生後、約20名の中国人観光客が一時阿蘇山周辺に取り残されたものの、福岡の中国総領事館がバスを手配し、当日中に福岡まで移動できたそうです。
連日新たな死者が判明し、また負傷者も多数に上っていますが、これまでのところ、在住中国人に負傷者がいる可能性はあるものの、訪日旅行客に死者、負傷者はいないと報じられています。
中国総領事館は、中国人向けに「九州への旅行は控えるよう」との呼びかけを行っています。現在の状況を考えればやむを得ないところだと思います。

あわせて、総領事館では被災地域に人員を派遣し、中国からの旅行者、在住中国人や中国系企業の支援に当たっているほか、東京の中国大使館も、日本国内在住の中国人に対し、地震等の災害から身を守るための措置を講じるよう注意喚起に努めています。

中国国内の報道も、震度7を観測した14日(木)夜の地震の直後から詳細に状況を伝えていたのですが、その後南米エクアドルでより大きな地震が発生し、多数の死者が出ていることから、現在はそちらに関する報道がやや多くなっています。
中国は、1976年の唐山地震や2008年の四川大地震など、数万人あるいはそれ以上の死者が発生する地震災害を経験しているため、地震には敏感です。
毎日のように、世界各地で発生する地震のニュースが伝えられています。
海外滞在中、いざという時の頼みは大使館等の在外公館です。
北京の日本大使館は、普段ですとパスポートの更新や国政選挙の際の在外投票、さらには講演会等イベントの開催時に足を運ぶ程度ですが、緊急事態が発生すれば、支援を求める、あるいは相談に駆け込むということになります。
中国は広大ですので、ヒマラヤ山脈を擁するチベット自治区や、シルクロードの新疆ウイグル自治区など遠隔地も、北京の大使館が所管しています。
距離的にはより近いところに領事館などがあるのですが、人員態勢等の関係で、これら地域で日本人が災害、事故等に遭った場合には、大使館から人員が出向き、邦人の保護に当たることとなっています。
当然ながら、迅速な対応は難しいため、遠隔地への旅行や滞在の際には、通信手段を確保し、また海外旅行傷害保険に加入し保険会社の支援を得る等の備えも必要になります。
日常生活では、大臣や事務次官、審議官等の幹部クラスを除き、外務省あるいは在外公館の役割等についてあまり意識する機会が無いかと思いますが、世界各地で、日々多くの職員が様々な活動に従事し、奮闘していることは理解しておきたく思います。

熊本や大分の被災地域では、避難所での水や食糧の不足など深刻な事態が生じているとも伝えられていますが、余震が続き、また道路等インフラの被害も甚大な中では、状況の改善に時間がかかることはやむを得ないところです。
関係自治体、自衛隊、警察や消防など関係者の努力が奏功し、避難されている皆様の生活の質が少しずつでも良くなることを願いたく思います。
被災された皆様におかれましては、どうぞ体調を崩されることなく、まずは身辺の安全確保に努め、無理のない範囲で活動に当たられますよう願いますとともに、一日も早く、日常の生活が戻られますよう、お祈り申し上げます。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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