マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。引き続き、熊本大分地区では余震が続いており、多くの方が避難所生活を余儀なくされています。被災された方へ心よりお見舞い申し上げると共に、一刻も早く平安な日々に戻られるよう、お祈り申し上げます。筆者も微力ではありますが、何か復旧・復興のお手伝いができないか、と思っています。一方、株式市場は先々週よりさらなる金融緩和を見越して急伸となりましたが、結局のところは期待が外れ、失望売りとなってしまいました。ただし、明らかになってきた2016年度の企業業績見通しは決して楽観的なものではありませんが、市場は既にそれらの懸念はある程度織り込み済みという様相も散見されます。むしろ、景気底割れ回避に向けて、追加政策の催促相場の地合いが増してきたという印象でしょうか。季節は「セル・イン・メイ(5月に売り逃げよ、という米国の相場格言)」と呼ばれる5月を迎えました。今年は参院選を控え、かなり思惑的な相場展開になる可能性があります。当面はかなり難しいハンドルさばきが求められると想像しています。
さて、今回は、現在丁度旬となっている「内需株」というテーマを起点に、「テーマ」主導の相場に関して一緒に考えてみたいと思います。実は、内需というテーマは既に市場の注目を集めていることもあり、もう少し後で検証という形で採り上げてみたいと考えていたものです。しかし、相場展開がかなり読みづらくなっていることもあり、敢えて少し捻った視点で株式相場への取り組み方に関して言及してみたいと判断しました。テーマに乗った投資をされている方、乗り遅れた方、改めて考えるきっかけとしていただければ幸いです。
まずは起点として「内需株」というものをおさらいしておきましょう。一般に、内需、あるいは内需株というのは、個人消費関連や建設・不動産といった国内完結型の産業を指します。一方、輸出で稼ぐタイプの企業・産業は、円安が株価の追い風とされるように、為替によって競争力が大きく変動するうえ、世界の景気動向にどうしても業績が左右されてしまう傾向があります。したがって、現在のように為替に方向感がなく(といって安定する状況でもなく)、新興国などを中心に景気減速懸念が台頭している状況においては、不確定要素が多くあり過ぎて先行不透明感が否めません。そこで、為替とは無関係で、国内景気と強くリンクする内需株は不確定要素がかなり限定的となる分、「投資においてリスクが小さい」傾向にあると判断できます。これが直近で内需株が注目される主たる要因と言っても過言ではないでしょう。現在は国内景気の鈍化懸念もより色濃くなっていますが、それでも世界景気を漠然と考えるよりも身近で実感できる分、想定外のことは起り難いというスタンスです。肌感覚を持つというのは結構重要で、何かあった時の迅速な行動はまさにこの肌感覚のなせる業と言えるでしょう。
しかし、お気づきの方も少なくないでしょうが、こういったアプローチにおける内需株というのは、実は「消去法的アプローチ」に他なりません。あくまで「マイナス要因が少ない」ことを材料としており、積極的に成長期待などのプラスメリットを狙うというスタンスとは明らかに異なります。もちろん、過去には内需拡大を軸とした積極的な内需株シフトも何回かありましたし(好例は前川レポートを拠り所としたバブル期の株価でしょう)、直近ではインバウンド関連も広義の積極的な内需株物色であったということができます(厳密には、為替や旅行者母国の景気動向に左右されるリスクはありますが)。これに対し、今回のような消極的アプローチにおいては、何がしかのシナリオが別段あるわけではなく、テーマという表現はなされますが、一種の緊急回避的スタンスで物色対象となっている印象が拭えません。そのため、こういった流れに乗った投資行動を一般の投資家が採ることは非常に難しいのが現実です。緊急回避的な動きに迅速に反応するには突然の潮目の変化を常にウォッチしておく必要がありますが、職業として株式運用をしている場合を除き、一般投資家は市場を始終睨んでいる訳にはいかないためです。当然、潮目の変化を予測して準備しておくには、相応の情報収集も必要です。メディアが主たる情報源となる一般投資家にはどうしても不利な状況と言えるでしょう。何かをきっかけに緊急回避的行動が不必要となれば、一気に流れも変わってしまうことも考えれば、テーマ株とは言いつつ、その内実は相場の流れをタイミングよく見切っていくトレーダー的対応が不可欠と言えます。そういった点で、直近の内需株への注目は、通常のテーマ株物色とは全く別モノである色彩が濃いと認識しておくべきでしょう。換言すれば、別モノと割り切って臨む必要があると考えるのです。
今回は偶々「内需株」が緊急回避的にその物色対象となっていますが、その都度、やはり対象は変化していくはずです(だからこそ、テーマ株!)。読者の皆様は既に感覚的にご理解いただけていると思いますが、注目されるテーマが消去法的なアプローチによるものなのか、潜在市場の大きさに注目したアプローチなのか、しっかり見極めることは非常に重要です。テーマ相場を一概に捉えるのではなく、投資方針をアプローチに応じて臨機応変に臨むことも相場を勝ち抜く隠れたノウハウの一つと言えるでしょう。
コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。
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