マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
ゴールデンウィーク中、ドル/円相場は105円台半ばまで円高ドル安が進行。2016年は120円台から取引がスタートしましたので、わずか4か月あまりで15円もの円高が進んだことになります。アベノミクスの終焉、日銀の金融政策が効かなくなったなどと国内要因を問題視する声も大きいのですが、米国が昨年12月に10年ぶりの利上げに踏み切った時点で「2016年は年4回程度利上げを見込む」としていたものを「年2回程度の利上げ」と利上げのペースを鈍化させたことから、世界の為替市場でドル安が進行してしまったことも大きかったと思われます。ドル/円相場の先行きを考える際は、日本の政治、金融政策のみならず、米国サイドが通貨政策に於いてどのようなスタンスにあるのかを見極めることも重要なポイントです。
米国は利上げを急がないスタンスを明らかにしたことで、昨年までのドル独歩高の是正が起こっています。ドル安となってきたことで商品市場では原油価格が反騰、安定した値動きとなっており、原油価格の安定がエネルギー関連企業の多い米国株の安定にも繋がっています。しかしドル/円相場においては円高となってしまうことで、日本株の安定にはつながっていません。1~3月までの市場の混乱は原油安や中国人民元安による株価下落など、金融市場全般の混乱による日本株売りと思われていましたが、足元では原油市場はじめ、中国、米国、欧州などの世界の株価が安定推移となる中、日本市場だけが脆弱なまま出遅れています。日銀のマイナス金利導入を批判する声もありますが、4月の日銀の金融政策決定会合では期待された追加緩和が発表されなかったことへの失望で、更なる株安、円高が進行してしまいました。ただし、何か追加緩和策が発表されて相場が崩れたわけではありません。となれば、次回の6月に緩和期待は紡がれたわけですから、ここからの相場をそれ程悲観することはないと思っております。5月には伊勢志摩サミットが予定されており、サミットに向けて安倍首相が財政出動で世界の金融安定でコミットできるよう精力的に根回し外交をされています。サミットでどのような声明が出てくるかも重要なポイントとなってくると思いますが、まずはサミットに向けての思惑が議長国である日本市場をサポートするのではないでしょうか。
ただし、気になるのが「Sell In May And Go Away」。5月に株を売り払って9月の半ばまで相場から離れていろというウォール街の格言ですが、2010年以降ここ5年間は格言通りに5月に米株が下落しており、馬鹿にしたものでもありません。昨年の米株の急落は8月でしたが、ダウ平均の最高値は5月19日でした。結局は5月に株を売って相場から離れていた方が良かったという格言通りの展開。今年の米株にもこのようなリスクがあるでしょうか。
アメリカの多くのヘッジファンドは解約できる時期が決まっているとされています。その多くは4半期毎で3月、6月、9月、12月の月末にしか解約できないルールとなっており、解約をするためには45日前に解約の旨を通知しなければならないという規定があります。となると2月、5月、8月、11月のそれぞれ15日ごろまでに解約が集中しやすいということになりますが、こうした事情がSell In Mayの背景とも言われています。
単純に考えると、解約申し込みが多ければファンド勢はポジションの整理に動かざるを得ないわけですから、これまで高かったものが下落するリスクが高まる時期。逆にこれまで売り込んでいたモノがあれば買い戻すということで、ショートカバーも起こりやすいとも言えますね。
米株は高値圏にありますので、下落するリスクに留意。しかしドル/円相場は円買いポジションが積みあがっているため、これが逆流すれば円安バイアスが強まる可能性もあるということになります。
アノマリー通りに米株が大崩れとなってしまえば、日本株とて無傷ではいられないと思いますので、株安・円高となるリスクには留意しなくてはいけない時期ですが、ドル/円相場のファンドのポジションの偏りだけを見れば、思わぬ巻き戻しが入る可能性もあり、サミットに向けては日本株、ドル/円相場がしっかりと推移するのではないでしょうか。GW明けも相場が大きく動きそうです。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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