第162回 中国の人口統計データ 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第162回 中国の人口統計データ 【北京駐在員事務所から】

中国政府の国家統計局が、4月20日(水)に、昨年2015年末時点での全国の人口(推計値)ほかのデータを公表しました。
中国本土の総人口は13.7億人で、前回2010年調査から3,300万人増加しました。この数字は香港及びマカオの人口や、海外在住の華僑などは含んでおらず、広義の中国人の人口は14億人あるいはそれ以上と考えられます。

昨年まで施行されていた一人っ子政策の影響で、中国では人口の男女比のアンバランス(男性が女性よりも多い)が問題となっていましたが、今回の調査では男性の割合は51.22%となり、前回2010年の51.26%から僅かですが差が縮小しました。
「一人しか子を持てないのであれば男児を」と考える人が多かったのですが、近年男性の結婚難が深刻化し、また都市部を中心に、「娘の方が親の面倒を良く見てくれる」と考える人が増えたことで、新生児の男女のアンバランスが是正されつつあるそうです。
一人っ子政策の廃止により、この傾向はさらに強まると見られます。
時間はかかりそうですが、いずれは男性の結婚難が解消され、結婚を望む男女がよき伴侶に巡り合えるようになることを願いたく思います。

今回の調査では、経済発展に伴い、中国人の学歴が全般に高まっていることも明らかになりました。
最終学歴別の人口は、前回2010年調査と比較して、高卒以上の者が増加し、小学校あるいは中学校卒業者が減少しています。
総人口に占める大学卒業以上の者の割合は12.4%となり、前回調査の8.9%から大幅増となりました。大学卒業生の数も年々増加しており、「大卒者の就職難」も既に深刻な問題となっています。
日本では、18歳人口が減少傾向に入り、また大学進学率の上昇も一段落となったことから、大学間での学生の奪い合いが始まっています。
中国ではまだ進学率の上昇が続いていますが、いずれは日本と同様、進学希望者の増加(パイの拡大)が止まり、大学に淘汰の波が押し寄せる可能性があります。このあたりも、様々な点で数十年遅れで日本を追いかけている中国の象徴的な事例ということができます。

世界最多の人口を擁する中国ですが、早ければ2020年にも総人口が減少に転じ、その後遠からずインドに第一位の座を譲ると見られています。
人口の減少は、経済規模の縮小に直結します。いずれ、中国の成長が止まり、横ばいないし縮小トレンドに入るまでに、国民の所得、生活水準の底上げを図っておかないと、貧困層が格差に不満を持つことで、深刻な社会不安が起きることも懸念されます。
なお6%台の成長を続ける中国ですが、残された時間はさほど長くないと考えなければいけません。

中国が「世界の工場」から「世界の市場」への変貌を遂げつつあることから、欧米先進国や日本から多くの企業が、消費市場としての中国に着目し事業を展開しています。
日本企業も、製造業に加え、小売、飲食やサービス(例えばブライダルサービス)等様々な業界から進出しています。
なおしばらくは、人口と所得の増加で消費余力が高まり、パイが拡大すると期待できますが、いずれは東南アジア、インド等南アジア、さらにはアフリカなどに新天地を求めることになるのでしょうか?
中国の人口動態と経済成長は、日本企業の戦略にも大きな影響を与えるものになりそうです。

中国の人口統計データに関するニュースから、いろいろ考えさせられることとなりました。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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