第208回 豪ドル下落は続くのか?!ここからの豪ドルを見る上でのポイント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第208回 豪ドル下落は続くのか?!ここからの豪ドルを見る上でのポイント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

豪ドルが弱含んでいます。豪ドルは4月21日に0.7834米ドルの高値をつけて以降下落が続いています。豪ドル/円に至っては、2014年11月の102.83円から1年半もの間下げ続け、現在は80円割れ水準。20円以上も円高豪ドル安が進行しています。豪ドルは今年に入ってから、上昇に転じ長期下落トレンドから上昇トレンドへ転換したかに見えたのですが、足下では豪ドル/米ドルでは3週連続陰線となり、上げ幅の50%を削る下落となってしまっています。

下落の最大の材料はGW中の5月3日、豪州準備銀行が政策金利のオフィシャルキャッシュレートを0.25%引き下げ、過去最低となる1.75%としたことにあります。市場はこの5月の利下げをあまり織り込んでいなかったことから、利下げの発表が「ネガティブサプライズ」となって豪ドルが急落してしまったのですが、なぜ利下げに踏み切ったのでしょう。

予兆はありました。4月27日に発表された豪州の四半期の豪消費者物価指数(CPI)が前期比0.2%の低下となり予想0.3%上昇に反してマイナスとなったことで、この時にすでに豪ドルは値を崩してしまっていました。

加えて豪州準備銀行は利下げした3日後の6日、四半期金融政策報告を公表、2016年の基調インフレ率は1~2%になるとし、従来予想2~3%から引き下げました。賃金の上昇率についての見通しも下方修正しており、追加利下げに含みを持たせるものとなっています。市場には、1~1.5%程度まで政策金利が引き下げられる可能性があると予測する向きが出てきました。これが足元の豪ドル相場を弱気に傾けてしまっているのです。

石炭や鉄鉱石などを中国に輸出することで、中国の台頭とともに上昇してきた豪ドルでしたが、世界的なコモディティ価格、鉄鉱石や石炭価格の急落に伴って豪ドルは長期下落トレンドに入っていました。今年に入ってから鉄鉱石は12月の底値から80%近くも急反発していたことで、豪ドルも下値を切り上げる堅調な値動きを見せていたのですが、足元では再び鉄鉱石価格が下落に転じていることも、豪ドルの上値を重くしています。

豪ドルは通貨取引量世界第5位ですが、1月からの豪ドルの切り返し局面でトレーダーらは豪ドルのロングポジションを積み上げており、4月26日時点で、2014年9月以降で最高水準のロングポジションとなっていました。このトレーダーらのロングポジションはその後3日の週、10日の週に発表されたデータでは減少しており、ポジションの調整はまだまだ続きそうです。豪ドルのIMMポジションは昨年2015年5月頃から売り越しとなっており、ショートポジションが増加する過程で豪ドル下落が加速していました。現状は、ロングポジションが減少しているとはいえ、買い越し状態。ロングポジションが38,000枚程度残されており、このロングが手仕舞われてポジション解消に向かう流れが継続するならば、豪ドルはまだまだ下落余地が大きいと見られます。果たしてトレーダーらは今後豪ドルのロングを手仕舞ってショートを増やすのか・・・。ポイントは、5月に引き下げられた政策金利が継続して引き下げられる可能性がどの程度あるか、そして、やはり鉄鉱石や石炭などのコモディティ価格推移が重要です。

政策金利が継続利下げとなるか否かは、今回の利下げの大きなトリガーとなったCPIが悪化するのか、改善するのかが最大の注目ポイントとなってきます。豪州だけでなく世界がインフレ率の伸び悩みに苦しんでおり、先進国にはほとんど金利がありません。日本と欧州はマイナス金利にまで突入する中、豪州にはまだまだ伝統的金融政策である利下げする余地が残されており、仮に先進国同様のゼロ金利にまで引き下げられたとしても、あと6~7回の利下げが可能。しかし、利下げがサイクルに入れば豪ドル下落のサイクルに入ると見ていいでしょう。逆に日本や欧州はマイナス金利にまで突入していますが、ここまで来るとマイナス金利幅を拡大しようとも、円やユーロ通貨は下がりにくくなっているという現実があります。

そして、コモディティ価格。原油や金などの国際商品市況は、長きにわたって続いた米ドル高が修正されていることから反発して下値がしっかりしています。鉄鉱石や石炭価格も同様の値動きが見られたのですが、足元では再び下落に転じています。原油や金などと違って、石炭や鉄鉱石は中国経済の影響が大きく過剰在庫が問題となっているために、ドル安という金融要因だけで支えられることがないようです。鉄鉱石価格が反騰するか否かも、豪ドル相場には重要なポイントとなってくるでしょう。

今日17日火曜日に豪州準備銀行の5月理事会議事録が公表されましたが、「5月会合で利下げするかさらなるデータを待つか協議した」と伝わり、政策金利据え置きの可能性もあったことがわかると豪ドルは一時大きく買い戻されましたが、底入れしたというような材料ではありません。
また、19日に発表される豪4月雇用統計で失業率の低下や雇用者数の増加が確認された場合、6月利下げ観測は後退し、短期的には豪ドル買いが強まるとの見方もありますが、利下げ余地が残されている豪ドルは上昇すれば、再び売りにさらされる可能性が大きいと思われます。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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