マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
2011年に70円台にあったドル/円相場は2015年には125円台まで上昇するスケールの大きな円安ドル高トレンドを形成しました。その大きな相場の背景には、政権交代(アベノミクス)と日銀の金融緩和政策があったと思われますが、震災の影響で日本の原子力発電がストップし、海外から化石燃料を購入しなくてはならなかったことで膨大な貿易赤字が計上されたことも同時に大きな円安要因でした。この貿易赤字は2011年には100ドル台であったWTI原油価格が20ドル台にまで下落する過程でみるみる縮小、現在では若干の黒字にまで転換しており、円安要因ではなくなってしまっています。また、12月に発表された補完措置、1月に発表されたマイナス金利と、日銀が追加の政策を発表しても思うように効果が見られなくなった今、アベノミクス・日銀バズーカ政策相場は終焉した、円高転換となった、との声も出てきていますが果たして本当に円安相場は終わってしまったのでしょうか。
≪ドル/円上昇は「円安材料」だけではない≫
先週5月18日に4月のFOMC議事録が発表されてから、ドル/円相場は110円台へと上昇しました。5月2日には105円台まで円高が進行しましたので、2週間ちょっとで5円ほど戻りを入れた格好です。議事録の内容は市場関係者を驚かすものでした。マーケットは次回6月のFOMCでの利上げの可能性をほとんど予想していなかったのですが、FRBメンバーは、「データが経済成長の回復を示し、雇用市場の改善が続き、物価上昇率が目標の2%に向け前進すれば、6月会合での利上げが適切になる可能性が高い」との判断していたことが明らかになり、6月利上げの可能性を織り込む動きが出始めたのです。
昨年2015年12月のFOMCでリーマンショック以降ゼロ金利まで金利を引き下げ、量的緩和策という非伝統的金融政策にまで踏み切らざるを得なかった米国が、ようやく正常化に向けて一歩踏み出したのですが、この12月時点では「2016年は年に4回程度利上げを実施」することを見込んでいました。この時までは、米国が利上げサイクルに入るということで、世界がドル買いとなっていたのですが、2016年に入って世界の金融市場が不安定となったことでFRBが一転利上げペースに慎重姿勢となり「年1~2回程度の利上げ」にペースが落ちるとの見方に転換したことで、一斉にドル売りが優勢となりました。年初からのドル/円相場の下落には、こうした「米国サイド」の政策の影響も大きく影響しています。今週からのポイントは「米国は6月に利上げするのか」という市場の思惑が重要となってきます。今週はFRB要人による講演、発言が多く、利上げ思惑が芽生えた市場には大きな変動要因となるでしょう。25日水曜はダラス連銀、ミネアポリス連銀、フィラデルフィア連銀総裁の講演が、26日木曜にはパウエルFRB理事の講演、そして27日金曜にはイエレンFRB議長の講演が予定されています。アベノミクスとは関係なく、米国利上げの折り込みが高まれば、ドル高基調が強まる可能性は大きいと思われます。
≪アベノミクスは金融政策だけではない?!≫
また、日本では26~27日伊勢志摩サミットが予定されており、サミットで「機動的財政出動での合意」がなされる否かにも注目が集まります。また、安倍首相は、伊勢志摩サミットの議論なども踏まえて消費税を予定どおり引き上げるかどうか判断するとしており、サミット明けには、財政面からの景気浮揚アプローチが出てくると予想されており、このアプローチが成功するか否かにも、市場関係者の注目が集まるものと思われます。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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