マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
6月はマーケットを動かす可能性のあるイベントが多いため、価格変動も大きくなるかもしれません。最大の注目は6月14-15日のFOMCで米国の追加利上げが実施されるか否か。それを占うのが雇用市場と物価動向ということで、まずは今週末6月3日(金)の米5月雇用統計の結果の注目度が非常に高いため、今週末に向けてどのような思惑が高まり、マーケットがそれをどの程度織り込んでいくかがポイントとなります。
<ポイントは市場の予想と結果の乖離>
米国の金融政策の行方を占う指標として、雇用統計などの経済指標は値動きを大きくする傾向があります。予想に対して、結果がどの程度の乖離があるかが焦点。低い予想でマーケットには期待がなかったところに、いい結果が出れば「ポジティブサプライズ」となり相場は瞬時に買いで反応します。逆に市場予想が高かった場合、予想に満たない数字が発表されれば「ネガティブサプライズ」となり、相場は売りで反応します。これがイベントトレードでの材料が出た後の価格変動の基本となる考え方ですが、必ずしもこの通りに動くわけではありません。「悪い予想に対し、悪い結果が出たにもかかわらず、価格が上がり出した」り「良い予想に見合う良い結果だったにもかかわらず、価格が急落してしまう」ことがあります。それは一体なぜなのでしょうか。
<知ったら終い~価格の事前織り込みが肝要>
マーケットには「噂で買って事実で売る」という格言があります。噂、すなわち市場の予想や思惑で価格が先に上昇していれば、結果がどうであれ下がってしまう、という事象を指します。つまり結果が出るまでがラリー。価格の上下は結果の良し悪しではないということです。指標の結果が良くても悪くても下がってしまうなら、結果が出る前に先にポジションを整理しようという動きも出ますから、発表前にはラリーが終了してしまうこともあります。ポイントは「イベントに向けてラリーが起きているかどうか」。例えば、110円前後をウロウロしているドル/円相場が、雇用統計に向けて111~112円と上値を切り上げて上昇を見せているようなら、雇用統計発表後、たとえ結果が良くてもドル/円相場は下落リスクが高いということです。先に織り込まれて上昇してしまったために余程のサプライズがない限り、予想と同程度のいい数字が出ても、利食いのほうが旺盛となってしまいます。
逆に、雇用統計予想が高くなく、相場が上がらず盛り上がりに欠く中で良い数字が出れば、ドル/円相場は勢いよく跳ねる可能性が高まります。今週末に発表される5月の雇用統計のNFP予想は+16万人と控えめな予想であるため、この雇用統計に期待してのドル/円のラリーはないかもしれません。むしろ、そういう時のほうが上昇のポテンシャルが高いといえましょう。
<本丸はFOMC,日本の政策やOPEC総会にも注意>
ただし、現状相場では先週末にイエレン議長が、景気やインフレ見通しの改善に言及したほか、「今後数カ月での利上げが適切となる可能性」と述べたことで、6~7月のFOMCでの利上げを織り込む動きが出始めています。もしこの流れが6月15日FOMCまで継続するならば、雇用統計の波乱で相場が乱高下することがあれば、買いのチャンスとなります。ただし、この場合もラリーはFOMCまでとなるかもしれませんが、、、。また、今週は6月1日の国会閉会後に安倍首相が会見を行う予定となっており、ここで消費税増税見送りや衆参同日選挙の可能性、財政政策などに言及する可能性も高く、関係者の高い関心を集めています。さらに、6月2日は原油価格動向を占う意味では重要イベントであるOPEC総会が実施されるのですが、WTI原油価格はすでに2月の26ドル台から50ドル台回復まで大きな上昇トレンドを形成しており、まさに「噂で買って事実で売る」展開も想定されます。原油価格の急落があれば、株式市場、為替市場への影響も懸念されますので、OPEC総会は波乱リスクでもあります。もし、6月の米国利上げの思惑が強ければ、この波乱を乗り越えてドル買いが継続、FOMCまでのドル買いラリーが期待できます。ただし、このラリーも事実が出てくるFOMCまで。トレードする際は、市場の思惑と価格への折り込みを意識して、イベントリスクを回避したいものです。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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