マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
世界の各地で、中国人旅行客による「爆買い」が話題になっています。
日本では、電化製品や化粧品、医薬品などが主なターゲットですが、このような商品の購入と並び、今世界で猛威を振るっているのが、中国人あるいは中国企業による海外不動産の購入です。
英国の大手不動産コンサルティング会社ナイト・フランクがこのほど発表した推計では、昨年2015年に中国人あるいは中国企業が購入した海外不動産の総額は300億ドル(約3兆2,500億円)を超え、前年2014年の151億ドルから倍増となりました。
同社のアナリストは、今年の海外不動産投資について、中国経済の減速傾向にかかわらず、さらに伸びを続けると予想しています。
昨年の主要な投資先は、主要国あるいは大陸の玄関口となるニューヨーク、ロンドンやシドニー、さらに米国の主要都市であるシカゴ、シアトルなどでした。
典型的な投資のパターンは、銀行、保険会社などが、これらの都市で安定的な投資利回りが期待できるオフィスビルを購入するというものでした。大手保険会社の平安保険グループがロンドンで5.06億ドル(約550億円)で、また老舗ホテルウォルドルフ・アストリアの買収でも話題となった安邦保険グループが、同じニューヨークで4.14億ドル(約450億円)で、それぞれオフィスビルを購入した案件が代表的な取引事例となっています。
ナイト・フランクの中国部門の責任者は、中国の国家戦略である一帯一路構想や、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を契機に、今後は東南アジア及び南アジアで、住宅物件の需要が高まり、中国からも投資資金が流入すると予想しています。
また、米国やオーストラリアへの投資も引き続き伸びる一方、英国ロンドンへの投資は、価格の高騰と優良物件の枯渇により、頭打ち傾向になると見ています。
また、投資主体も、上述の保険会社のような大企業から、中小企業、開発業者、ファンドさらには個人へと広がり、旺盛な投資が続くとしています。中国経済の懐の深さを感じさせられます。
上述の通り、金融機関など大企業はオフィスビルを好む一方、個人は投資目的に加え、子女の留学時や自身の退職後の利用を想定し、住宅への投資が中心になっています。このため、投資先の選定には、教育水準や風光明媚な景観という要素も重要になります。
東京でも、一部のタワーマンションなどで、中国人など外国人が購入した物件が使用されず「灯りの点かない住まい」となっていることが伝えられています。
実需以外の投資資金が流入することで、価格の高騰につながっているとの指摘もあり、規制強化での解決は難しいとは言え、購入者、入居者にとり望ましい形で問題解消が図られるよう、願いたいと思います。
不動産投資ではありませんが、報道によると、サッカー日本代表の本田選手が所属するイタリア、セリエAのACミランが、中国の投資家グループにより買収とのニュースが飛び交っています。
欧州主要リーグの試合を見ても、ユニフォームに中東の航空会社などのロゴが目立ち、近い将来スポンサーは中国勢あるいは中東勢ばかりということになるかもしれません。「時代の変化」を痛感させられます。
日本では、中国経済に関し悲観的な見方が高まっていると伝えられていますが、まだまだ底力は侮れないと感じさせられるニュースでした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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