第212回 ブレグジットリスク警戒?!世界の債券利回り過去最低水準に低下【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第212回 ブレグジットリスク警戒?!世界の債券利回り過去最低水準に低下【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

先週のコラムで「6月は米国債10年物利回りが反転しやすい」という過去の経験則(アノマリー)をご紹介しましたが、今月、2016年6月の米国債10年物利回りは「反転しないとまずいのでは...?!」というレベルにまで低下してきています。米国債10年物利回りは6月10日(金)、1.64%で終了しました。これは2013年5月以来の水準。「バーナンキ・ショック」と呼ばれる株価とドル円相場の暴落が起こった時の水準にまで米金利が低下しているのです。当時のFRB議長であるバーナンキ氏が、QE(量的緩和政策)の終了に言及したことが2013年5月の株安、円高、債券高のショックの引き金となりました。米国債の「利回りが低下」するというのは、安全資産とされる米国債に「資金が流入し債券価格が上昇」するということです。リーマンショック時は米国の終焉とまで囁かれたものの、バーナンキ氏による機動的な金融緩和政策で米国市場は持ち直しましたが、そのバーナンキ氏が緩和政策の出口に言及しただけでマーケットは大混乱に陥ったのです。このショックで日経平均は15942円の高値から6月安値の12415円まで実に22%もの下落となりました。ドル円相場は103.72円から93.33円まで10%下落を演じました。2013年当時と市場環境は変化していますが、その時と同レベルにまで、米国債利回りが低下しているという事実は看過できないと思っています。低下しているのは米国債利回りだけではありません。ドイツ国債、イギリス国債も同様に10年債が過去最低利回りを更新。マイナス金利である日本国債でさえ、マイナス利回りがさらにマイナスへと低下し記録を更新中で、先週10日(金)にはとうとう15年債利回りまでマイナス利回りに突入する事態となっています。

つまり、今起こっていることは安全資産である先進国国債のバブル。国債価格が上昇しているということです。安全資産というとゴールドも同様にリスク回避ムードが高まると資金が流入し価格が上昇しますが、現在ゴールドの価格も高止まり中。足元では米国の5月の雇用統計の結果があまりにも悪かったため、6月は米国の利上げがないだろう、ということで、ドル安となったことがゴールド上昇のトリガーとなりました。市場は「リスク回避」に動いている、と言っていいでしょう。おそらく6月23日(木)の英国のEU離脱を問う国民投票が、現在の金融市場における最大のリスク要因と思われます。

ブレグジットについては今年2月23日掲載の過去コラム、

「第197回 イギリスのEU離脱を問う国民投票が6月23日に決定」
http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2016/02/23.html

でそのリスクについて書きましたが、いよいよその国民投票を来週に控え、世論調査ではEU離脱支持派が残留支持派を上回っており、金融市場は「まさかのシナリオ」にも備え始めたということでしょう。今回のリスクはイギリスであり、EUであるため、通貨ではポンドやユーロが売られやすく、米ドルが選好されやすいセンチメントです。また、リスク回避相場となると、どうしても円が選好されて円高となってしまいます。リスク回避時に円高となるのは、その流動性の高さに加えて日本が世界一の対外純資産国であるためです。これは24年連続で世界一。日本は世界中に資産を持っているのですが、もし、何かリスクが生じた場合に、海外にある資産が大きい日本が外貨建て資産の売却を行い、自国に戻すことがあれば自国通貨買い=円高となるのではないか、という思惑に繋がるというわけですね。これが実際に起こるということではなく、世界中の金融関係者に刷り込まれているということです。

このリスク回避ムードの高まりで、週明け6月13日(月)、ドル円相場は105.73円まで下落しました。今年の最安値5月3日の105.55円にほぼほぼ並ぶ水準にまで下落してきました。ここで反発できればWボトムとなり、大きく切り返すことができるかもしれませんが、105円台を割り込むと、100円節目を目指す一段の円高を覚悟しなくてはならないかもしれません。世界が警戒するブレグジット。米国債10年物利回り6月反転のアノマリーが今年も機能するような相場になるかどうかは、英国民にかかっていると言えましょう。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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