第168回 中国の中古ブランド品市場 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第168回 中国の中古ブランド品市場 【北京駐在員事務所から】

GDPで世界第二位の経済大国である中国は、高級ブランド品の市場規模では既に世界一となっています。
米国のコンサルティング会社の推計によると、2014年に中国で販売された高級ブランド品の総額は1,150億人民元(約1.8兆円)に達し、世界全体の販売額の47%を占めています。

これだけ売れれば、自ずと拡大するのが中古品の市場です。
特に、近年はやや下火とは言え、中国では企業が取引先の関係者(例えば社長夫人)に高級ブランド品を贈ることが頻繁に行われており、日本で中元や歳暮の贈答品が換金されるように、未使用あるいは状態の良い商品が中古品市場に出回る土壌があります。
2011年から2015年の5年間で、中古ブランド品の取引額は3,000億人民元(5兆円弱)にも達したと推計されています。
取扱業者も急増しており、現在中国全土には2,000を超える中古ブランド品の販売店舗があるそうです。
中古品は、その状態等個別性が強く、ネット販売になじみにくいため、集客力のある実店舗を擁し、また買取を含めた商品仕入のチャネルを持つことが、業者間の競争に打ち勝つための条件となっています。

順風満帆のようにも見える中古ブランド品の市場ですが、直近では偽物を掴まされることを不安視する消費者の間で買い控えの傾向が見られるとのことで、業界団体である中国再販品取引協会(CRGTA)はこのほど、政府の認可のもとブランド品の真贋の鑑定を行う国有企業「中国検験認証(CCIG)」と協力し、鑑定機能の強化を図ると発表しました。
CCIGは、昨年「ブランド品鑑定センター」を設立し、政府機関の協力のもと、税関職員、ネット通販業者、個人商店主などを対象にブランド品の真贋の見分け方に関する情報提供や研修を行っています。

CRGTAは、本年2月に100社超の会員企業により構成される実務委員会を設置し、CCIGの協力のもと、近日中に北京市の中心部に事務所を設け、消費者が持ち込んだバッグ、アクセサリー、衣料品、宝飾品、時計などのブランド品を対象に、真贋の鑑定を行うことを予定しています。また、今後2年間をかけ、中国全土の主要都市に同様の事務所を開設する計画です。
CRGTAは、会員企業が偽物を販売した場合には、協会のホームページでの企業名の公表と、3年間の会員資格の停止を行うとしており、会員企業に対する一定の抑止力となることが期待されます。
将来的には、販売業者が消費者への販売前に商品の鑑定を受け、合格した旨を表記して販売すること、また優良な販売業者に一定の認証を与えることなども期待されるところです。

中国では、中古住宅の流通販売は盛んに行われており、また中古車の市場も近年急速に成長しています。ただ、中古車については、品質のばらつきが大きく、また消費者が個々の車の状態を正確に理解し、比較できるような検査あるいは表示の仕組みが確立されていないそうで、ブランド品と同様、現在業界団体を中心に市場の整備が図られています。
ブランド品に関しては、中国では偽物、それも精巧に作られ、消費者にはそれと分からないような品物が多数流通していますので、消費者が購入に二の足を踏むのも当然と思われます。
CRGTAとCCIGの取組みが、流通市場からの偽物の締め出しにつながり、中古ブランド品の流通市場が消費者の信頼を得られるよう、期待したく思います。

日本では、繁華街、商店街の多くで、中古ブランド品の販売店を目にします。陳列品を一瞥しますと、新品同様の品から、見るからに「使い古し」という印象のものまで様々あり、中古品流通市場が確立していることが理解できます。
正直、私はあまり関心が無いのですが、日本では偽物の混入が阻止されており、消費者が安心して中古品を購入できること、また各ブランドの知的財産権も保護されていることは評価できます。

中国の中古ブランド品市場が成長途上であり、健全な発展のため、関係者の努力が求められていることが確認された話題でした。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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