マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
経済成長で所得が増加し、市民の購買力が高まっている中国では、宝飾品の需要も拡大しています。
需要拡大を追い風に、近年中国の宝飾品市場は順調な成長を続け、大手小売チェーンなどは「我が世の春」を謳歌して来ました。
ところが、成長減速や、習近平政権が推し進める綱紀粛正の影響など様々な要因により、昨年後半あたりから一転逆風となっているそうです。
中国本土に2,000店以上を構える香港の大手小売チェーン「周大福」は、ネット通販の台頭や価格競争激化の影響もあり、業績の急降下に見舞われています。
昨年は4,600名の人員削減を行い、人件費を圧縮しましたが、売上減(本年3月期の中国本土での売上高は前期比21.3%減少しました)には抗えず、全社で46%もの大幅減益となりました。
同社は、今期中に香港で7店を閉鎖するなど、店舗網の再編を進めるとしていますが、当面、大幅な人員削減は行わない方針とのことです。
同社は年次報告書で、「中国の消費意欲減退や価格競争に加え、商品の差別化が難しくなっていることも収益悪化の要因」と述べています。
上海の老舗チェーン「老鳳祥」も、本年1~3月期に前年同期比5%減収、17%減益と逆風にさらされています。
また、上海市に隣接する浙江省の「浙江明牌珠宝」も、同期に前年同期比36%減収、62%減益となっています。同社では、人件費と店舗賃料の上昇が激しく、これが大幅な減益につながったとしています。
各社の経営成績悪化の背景には、様々な原因、理由が絡んでおり、しばらくは厳しい状況が続くかもしれません。
中国では、伝統的に翡翠など宝飾品の文化があるほか、金も大変に好まれています。
また、近年は洋装の普及により、ジュエリー、アクセサリーの需要が拡大しており、北京には欧米の有名ブランド店も「揃い踏み」と言う感じで出店しています。
足元の状況は厳しいですが、今後、所得水準の更なる向上で「新たな購買層」が出現する可能性も高く、小売各社にとっては、「耐えた者が最後に報われる」ことになることが予想されます。
人口減少とデフレ傾向が続いている日本から見ますと、やはり底力が感じられ、世界各国、各企業が中国に注目するのも当然のように思います。
現在の環境悪化と競争激化に耐え、次の成長を享受できる企業はどこになるのか、注目されるところです。
宝飾品小売業界のニュースから、現在の中国の厳しい状況と、潜在力の高さを感じさせられることとなりました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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