第218回 7月FOMCと日銀、イベントのポイント~金利と米株【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第218回 7月FOMCと日銀、イベントのポイント~金利と米株【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ドル/円相場は英国のEU離脱や6月分の米雇用統計の数字の悪化で2回の100円割れを示現するも、その後の参院選で与党大勝に加え、ヘリコプターマネーへの期待、また米国年内早期利上げ期待の再燃で107円台にまで大きく反発上昇しました。今週29日の日銀の金融政策決定会合で日銀の黒田総裁が市場に高まる追加緩和やヘリコプターマネー期待に後ろ向きなスタンスを表明すれば、ドル/円相場は再び大きく下落するリスクがあるとして警戒する声も出ています。

現在、米株は史上最高値を更新し高値圏を維持しています。米株がこれだけ強いということは、金融市場全般は「リスク選好」相場であるということ。英国のEU離脱で急落した米国債10年物利回りも7月8日に1.38で底を打って反転上昇に転じたように見えます。債券利回りもこれだけ低下してしまうと株式配当利回りの投資妙味が上がるからでしょう。資金は株式市場へと流れ込み、リスクを取る動きが続いています。

リスク選好相場であるならば、ドル/円相場だけが下がっていくことは考えにくいのですが、米株も高値圏にあるため、調整への警戒が出てきています。米国市場だけを見ていると、英国のEU離脱によるショックは一時的な下落にとどまりました。結局は過剰流動性マネーが行き場を探して米国株へ流れ込んでいましたが、FOMCへ向けて利食いへの警戒もあるでしょう。

今回のFOMCでの利上げはほぼないと思われますが、市場関係者の中には9月の利上げに向けて地ならしをしてくるだろう、という見方も。7月の声明でタカ派的(利上げに前向き)なスタンスを示すかもしれないということですね。足元のドルの堅調は、英国国民投票で過度に悲観に傾いた利上げ後退論が修正される過程で、ドル金利上昇期待が織り込まれたため、と考えることもできるのですが、しかし本当にドル金利上昇が理由でのドル上昇ならば米株はすでに調整を強いられているはずであり、現状ではまだ利上げ織り込みは進んでいないと考えています。

ここで注目されるのがユーロです。先週末のドイツミュンヘンでのテロ事件で、ユーロが大きく売り込まれました。ユーロが下がるということは、逆に考えるとドル高ということです。このところ、欧州域内でのテロ事件が頻発しておりユーロの上値を抑えてしまっています。ユーロは5月に高値を付けて下落基調にあり、ユーロがジワリ下落することで、ドル高を招いているのです。

これに困るのは米国です。大統領選挙ではトランプ候補もヒラリー候補もドル高を是正する発言をしています。これは米国の製造業をサポートするため。米国製造業の景況感を見るISM製造業景況指数は2015年11月から2016年2月までの4か月間も好況と不況の分かれ目とされる50を下回り下落基調にありました。ドル高が影響していたことは明らかです。ISMが50を割り込んでいるのに利上げなど出来るわけがない、というのが市場関係者の見方でしたが、実際米国は12月にたった1度利上げをしただけで、半年間も利上げを見送っています。足元では米国利上げペースの鈍化からドル高の調整が入り、製造業景況指数は持ち直しているのですが、足元ではユーロの下落もあって再びドルが強含んできました。ここで米国が利上げに前向きなスタンスを表明すればドル高が加速し、再び製造業への悪影響が再燃しかねないため、米国株が大きな調整を強いられる可能性があります。となると、市場の利上げ期待再燃を後退させる方向、、、つまりイエレンさんはやはり慎重にハト派的なスタンスを貫く可能性が大きいのではないか、と思われるのです。

FOMCを受けて早期利上げ期待が高まりドル高となれば、ドル/円相場もドル高となるかというと、米株が大きく下落することに連れて円高になるリスクが大きいとみたほうがいいでしょう。逆にハト派的なスタンスが示され、ドル安となれば、ドル/円相場も下落するかもしれませんが、そうした値動きは一時的で結局は米株高に連れてドル/円も上昇するのではないでしょうか。

今週のドル/円相場、市場関係者の多くは日銀の出方に注目していますが、FOMCを受けて米株がどう動くか、という点にも注意が必要です。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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