マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。7月は中旬以降に大きく反発し、6月の急落分を取り戻す相場展開でした。ただし、事前にかなりの期待値で織り込まれていた月末の日銀の追加緩和はやや肩透かしの内容でした。結果的に底堅い推移となりましたが、上げ相場を若干冷やすかのような受け止め方をされたように感じています。当面は来週にも明らかとなる経済対策が焦点となりますが、その規模を巡って、市場は一段の催促相場という様相を呈してくるのではないか、と予測しています。
さて、今回は「ゲーム」をテーマに採り上げたいと思います。夏休みと同時に日本でも配信されたポケモンGOは一大ブームを巻き起こしています。スマホ片手に道々ポケモンを探す人々が出現し(筆者もその一人です(笑))、歩きスマホによる事故・事件が早くも報告されている程の社会現象となっています。もちろん、こういった状態は早晩沈静化するとは思いますが、これだけのブームが発生した以上、その後のゲーム市場、当然、延いてはゲーム関連銘柄にも大きな影響を与える可能性は否定できないと考えます。このコラムの基本スタンス(注目中のテーマは敢えて取り上げない)とはちょっと異なるのですが、重要な変化点となるかもしれないため、現時点で一旦まとめてみたい、と考えました。それだけ、ポケモンGOが投じた波紋は非常に興味深いものと受け止めています。
筆者がまず注目したのは「可処分時間」です。可処分時間とは、個々人が自分の自由にできる時間、と考えてください。社会人であれば、仕事に行っている時間はこれに相当せず、また家事などに取られる時間も一般にはこれに当たりません。端的には、趣味などに使える自由時間と云ってよいでしょう。具体的には、読書であったり、音楽鑑賞であったり、テレビを見たり、などがその代表例です。近年は家庭用ゲームやSNSの浸透にしたがい、その可処分時間のいくらかはそれらに新たに割かれるようになりました。当然ですが、ユーザーがたくさん利用しなければ事業の拡大は期待し難いため、これらの産業は可処分時間の獲得・拡大が成長の至上命題であるのです。しかし、個々人の持つ可処分時間にはそもそも限界があります(他のすべてを犠牲にしても最大で一人一日当たり24時間)。そのため、この可処分時間の争奪戦は限られたパイの分捕り合いというゼロサムゲームとならざるを得ません。後発であるゲーム業界やSNS業界が、可処分時間の維持・拡大に向けて「あの手この手」で注力しているのはこのためなのです。
そういった中、このゲームでは長距離を実際に歩いて行うため、ユーザーは自身の可処分時間の費やし方をこれまでと大きく変える可能性があります。もちろん、ブーム沈静後の動向を見極める必要はありますが、これだけの熱狂を生んだ滑り出しを見れば、時間が経っても可処分時間の配分が旧に復するとは思い難いものがあります。このことは、ゲームやSNSのこれまで取ってきた手法やゲームの内容が大きく変化せざるを得なくなる始まりとなるかもしれません。延いては、個々人の間に新たな時間の使い方が確立され、新しい余暇の過ごし方が提案されるのではないか、と予想します。
次には、「エクササイズ効果」に注目したいと思います。従来、ゲームと云えば大体は屋内で行うのがほとんどでした。Wiiなど体を使って遊ぶゲームもありましたが、本来の運動というレベルには至るものではなかったはずです。しかし、このゲームでは場合によっては数キロも歩く必要があります。ゲームは内向的なイメージもあったのですが、アウトドア的な色彩がこれによって付加されたと考えるのは飛躍しすぎでしょうか。筆者にはハイキングなどで行うオリエンテーリングと同じようにさえ考えてしまいます。健康によいとなれば、ゲームに対して冷やかな見方をする人達の意識も一変させる可能性があります。さらに、「観光効果」にも注目します。既に、町興し・村興しに使えないか、との声が出始めていますが、実際にこれらが人の移動頻度を引き上げる可能性は十分あります。そして、人が動けば、そこで経済が回り始めるはずです。
当面はどうしても携帯用バッテリーなどがゲーム関連銘柄として注目されるでしょうが、人が余暇時間の使い方を変え、運動もでき、観光により経済的効果が期待できるとすれば、その波及効果はかなり広範囲にわたるというシナリオが描けます。むしろ、こちらの方が連鎖的な影響も含めて潜在的インパクトは大きいでしょう。果たして、こういったシナリオが成立するのかどうか。やや過熱気味のこのブームがどういった形で沈静化してくるか、が大きなポイントになってくると考えます。
コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。
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