第220回 過剰流動性相場でリスクオン?!再び世界の利下げと緩和競争激化【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第220回 過剰流動性相場でリスクオン?!再び世界の利下げと緩和競争激化【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

7月分の米雇用統計の結果が市場予想を上回ったことで、ドル建ての金価格は急落となりました。金利先物が織り込む年内利上げの確率は雇用統計発表前の約34%から約46%へと上昇し、わずかに12月利上げの可能性を織り込む動きが出てきたことでドル高となったためですが、一方で米株が大きく上昇となりました。ナスダック総合指数は雇用統計発表後、史上最高値を更新しています。利上げが織り込まれる相場展開だというのなら引き締めですので株も下落するはずですが、そうはならなかった...。つまり、現時点ではまだ米国の年内利上げには懐疑的な見方が大勢だと思われます。

8月2日オーストラリアの中央銀行RBAは、政策金利を1.75%から史上最低水準となる1.50%へ引き下げました。RBAは5月にも利下げを実施しており、8月で今年2回目の利下げとなります。その後5日に発表された四半期金融政策報告の中で、2017年から2018年にかけての基調インフレ率がターゲット以下の水準で推移するとの見通しを発表しており、状況によっては追加利下げの可能性も残されています。

そして8月4日、英国の中央銀行BOEは、政策金利を0.50%から0.25%へ引き下げました。英国の政策金利はリーマンショックを受けて2008年10月に5.00%から4.50%に引き下げられ、翌年2009年3月まで断続的に利下げを実施、0.50%まで引き下げられました。以降7年もの間0.5%の金利を維持してきたのですが、EU離脱後の景気後退懸念から約7年半ぶりの利下げに踏み切った格好です。年内にはほぼゼロ金利水準にまで利下げが実施される見込みとなっています。英国の利下げは予想通りだったのですが、資産買い入れ枠も増額しました。国債を600億ポンド増額、それまでの3750億ポンドから4350億ポンドに。さらに社債適格級についても100億ポンドの買い入れを発表しています。

そして、今週は11日にニュージーランドの金融政策が発表されます。現時点で政策金利は現行の2.25%から2.00%へ0.25%引き下げられることが確実視されています。NZ中銀は今年の3月にサプライズで0.25%の利下げを実施していますが、その際に年内追加利下げを示唆しており、おそらく今回8月に実施するだろうと予想されているのです。

さらに付け加えると、7月29日には日銀もETFの買い入れ枠を増額する追加緩和を行っていますね。日本と欧州はすでにマイナス金利政策を実施しており、引き下げる金利がありません。(マイナス金利を深掘り=拡大することもできますが...)日本にはヘリコプター・マネー議論まで噴出しており、まだその思惑は完全には消え去ってはいないようです。

現在、米国以外の主要各国で「通貨安競争」が再燃しているのです。この緩和マネーが「過剰流動性相場」を形成し世界の債券市場へ、そして米国の株式市場へ流入しているとみられますが、ここで米国が利上げを実施したらどうなるでしょうか。引き締めバイアスにあるのは米国だけです。過剰流動性マネーは一斉に米ドルに向かうと思いませんか?!

ドル高となれば、再び新興国の通貨が下落するでしょう。それよりも過度なドル高は米国自身、製造業セクターへの影響は免れることはできません。米国の輸出産業の業績への悪影響が懸念されれば、米株が大きく崩れるリスクにつながります。

前回は、米国がなぜ利上げに踏み切らないのか、というテーマでコラムを書きましたが

第219回 米国はなぜ利上げに踏み切らないのか~利上げの条件とは

米国以外の主要各国がこぞって利下げや量的緩和に踏み切る流れの中では、どんなに米経済指標が良好でも利上げはできないだろうとタカを括っているということかもしれませんね。米国が利上げに躊躇すればするほどバブルが醸成され、次に利上げを実施する際には崩壊リスクが高まることになりかねません。年後半はFRBが一体どのタイミングで市場に次の利上げを示唆するのかが最大の焦点となってくると思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount

@hirokoFR

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧