第175回 中国人の海外旅行先が多様化 【北京駐在員事務所から】

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第175回 中国人の海外旅行先が多様化 【北京駐在員事務所から】

円高が進み、対人民元では1元が21円に近い水準から15円前後まで大きく変動しています。
中国人にとっては、日本への旅行が割高となり、地方空港への航空便で乗客が減少している、また「爆買い」も一服し小売業への影響が生じていると報じられています。

訪日旅行には円高が逆風となっていますが、中国人の海外旅行熱そのものは衰え知らずで、最近では、これまであまり知名度が高くなかった「穴場」の国や地域を訪れる旅行者が増えているそうです。
先日の英字紙China Dailyに、「2016年上半期に、前年同期からの中国人旅行客の増加率が高かった国、地域トップ10」が掲載されていました。内容は以下の通りです。

1位 パキスタン

2位 ケニア

3位 フィンランド

4位 エジプト

5位 南アフリカ共和国

6位 アルゼンチン

7位 チェコ共和国

8位 イスラエル

9位 ブラジル

10位 アイスランド


旅行者には観光目的だけでなく商用などの客も含まれることや、「分母が小さいので増加率が大きくなる」ことを差し引いても、中国人の関心が東欧、北欧、アフリカ、南米など、さまざまな方向を向いていることに驚かされます。
中国最大手のオンライン旅行代理店Ctripのマーケティング部門責任者は、パキスタンへの旅行者が増加していることについて、「南シナ海を巡る問題などで、パキスタンが一貫して中国政府の立場を支持していることが大きい」と指摘しています。
また、フィンランド、チェコなどは、フランス、ベルギーなどでのテロ事件頻発により、「欧州内でより安全なところを」との考えから訪問者が増えているとしています。
実際、フランス政府が中国人に発給したビザの件数は、本年上半期に前年同期比15%減となりました。パリやニースでの惨劇を目の当たりにしますと、旅行者の足が遠のくのも致し方無いように思います。
訪日ビザの発給件数はまだ増加傾向が続いているそうですので、日本に対する評価は引続き高いと言えましょう。

中国人旅行者の動向は、外交関係、自然災害やテロの有無、為替相場の変動、ビザの発給条件など様々な要因に左右され、非常に「振れやすい」と言えます。大学の研究者は、「治安、安全が旅行者の最大の関心であり、加えて訪問先で『歓迎されている』と実感できることが重要」と指摘しており、自然災害がちょっと心配なものの、良好な治安と「おもてなし」をアピールできる日本は強みを有していると言えます。

1980年代のバブル期から、90年代の半ばくらいまでは、好景気と円高進行を背景に、多くの日本人が、世界各地に旅行に繰り出しました。
当時、航空機事故などが起きると、世界のどこであっても、「日本人乗客の有無は?」と気になったものです。今ではこれが完全に中国人にとって代わられてしまったように思います。
観光名所での案内や、免税店、土産物店での店員の対応も、今後は日本語から中国語へのシフトが進むことでしょう。より多くのお金を落としてくれる客に手厚くサービスを提供することは商売の王道ですが、日本の落日を見るようで、悲しい思いもいたします。

中国人海外旅行客の動向から、日本と中国の勢いの差を見せつけられてしまいました。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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