第221回 株高でもドル/円相場が円高基調なのはなぜ?【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第221回 株高でもドル/円相場が円高基調なのはなぜ?【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

8月11日木曜、米国の株式市場ではダウ平均株価、S&P500、ナスダック総合指数の3指標が揃って史上最高値を更新しました。これはおよそ17年ぶりのこと。日本株市場も米国株には及ばぬものの、上値が軽くなってきました。7月の日銀の金融政策決定会合で日銀がETFの買い入れを従来の3.3兆円から6兆円に拡大、実際に8月4日と10日と707億円のETF買い入れが実施され、市場には日銀の買いに逆らうべからずのムードが漂ってきています。日経VIも12日に18.45pと今年最低水準にまで低下。ボラティリティ低下は先行きに対する不透明感の払しょくという解釈に従えば、市場はリスクテイク相場に入っていると言えます。しかしながら、ドル/円相場は円高基調から脱却できていません。2015年までの相場では、米株上昇、日本株上昇のリスクオン相場であればドル/円相場も上昇する正相関があったのですが、今はなぜ株高に相関しなくなってしまったのでしょうか。

①米株高の背景にあるのはドル安
2008年のリーマンショック以降、米国が金利をほぼゼロにまで引き下げ、量的緩和政策を実施した結果もたらされたのがドル安でした。ドル安によってダウ平均はリーマンショック後の安値6,460ドルから18,000ドル台にまで回復したのです。しかしダウ平均は2014年12月には18,000ドル台を達成したものの、2015年は15,300ドル台に2度急落する局面があり、結局はおよそ2,700ドル幅のレンジ相場が続いていました。これは2015年米国がいよいよ利上げに踏み切ることがマーケットのテーマとなり、ドル高が急激に進んだことが背景にあります。もちろん、ドル/円相場もこの米国側の材料に起因したドル上昇圧力によるドル高であった側面がかなり大きかったものと考えられます。

しかし2016年に入ってから米国の利上げは1度も行われていません。なぜ利上げできないのか、という議論については過去コラムを参照いただくとして、年内の利上げは12月に1度できるかどうかというのが現在のコンセンサス。つまりマーケットは再びドル安の時代が長期化することを織り込んで米株を買っているのです。2015年1年間エネルギーをため込んだレンジ相場が上抜けたということは、米株はさらに高値追いの展開となることが予想されますが、この後ろ盾になっているのが「利上げが遠いことからのドル安の長期化」がある、と考えると、米株高でもドル/円相場が上昇できないことは不思議でもなんでもありません。

②日経株高の背景にあるのは日銀のETF買い
日銀は7月の決定会合でETFを6兆円購入することを決定。8月に入って実際にこれまでの倍額相当となる1日で707億円分のETF購入を開始しています。また、上場企業による自社株買いも相当額見込まれています。2015年度の自社株買い実施額は5兆3,131億円でしたが株主重視の流れの中、2016年度はさらに増えるとの見方が株価の下値を支えています。こうした株買いは、為替市場でのドル/円上昇要因にはなりません。

③外国人投資家が日本株買いに動かない
外国人投資家が日本株を買う場合は、日本円への両替が必要ですが、為替の変動リスクを避けるため、日本株を買ったときと同じ金額分の円の売りポジションも同時に持つのが一般的です。日本株を買うために通貨市場で「両建て」を行うようなものです。しかし、アベノミクス、日銀の異次元緩和下では海外勢はドル/円相場で円安が進むトレンドであることから、日本株を買うために必要な円買いの「2倍もの円売り」を同時に行うことで、為替市場での円安進行分の利益も享受していました。結果、日本株上昇とドル/円上昇が正相関となっていたのですが、、、これが逆流するとどうなるでしょうか。日本株を売る時には、円の売りポジションも同時に解消するため、ドル/円相場には、日本株の下落率以上の下落圧力が発生することになりますね。外国人は現物・先物合計で年初から英国がEU離脱を決定した6/24まで日本株を約6兆円売り越しています。まだ彼ら外国人投資家が日本株買いを再開していないことも、ドル/円相場が立ち直れない一因であると思われます。
ここからは、米国利上げ時期、外国人投資家が再び日本株買いに動くか否かがドル/円相場が下げ止まって再び上昇できるかどうかのポイントになってくるものと思われます。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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