マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
例年この時期になると注目されるのが「ジャクソンホール」でのFRB議長の講演。ホールと言っても会場のことじゃありません。ジャクソンホールとはワイオミング州北西部に位置する景勝地の名称です。ただし、市場関係者がジャクソンホールを話題にする時には、この景勝地で毎年開催される経済政策シンポジウムを指しています。
ジャクソンホールシンポジウムには、世界各国から中央銀行総裁や政治家、経済学者、評論家が一堂に会して様々な経済問題について話し合いが持たれ経済政策を討議します。日銀の黒田総裁ももちろん参加しますが、今年は26日にニューヨークで講演、27~29日にジャクソンホールシンポジウムに参加する予定となっています。各国の中央銀行首脳が多数出席することもあり、金融関係者らによるダボス会議のような位置づけとも言われているのです。
このシンポジウム、実はそれほど歴史があるわけではありません。1987年から毎年8月に開催されているのですが、市場関係者の注目が高まるようになったのはサブプライム・リーマンショックに端発する金融危機以降のこと。危機以降、FRBは大胆なQE(量的緩和)策を導入することでマーケットをサポートしてきました。そのため、米国の金融政策が世界の金融市場を占う重要なものとなったのですが、特に2010年のジャクソンホール会合で、当時のFRB議長であるベン・バーナンキ氏はQE2(量的緩和第二弾)の実施を示唆したことをきっかけに世界の株価は大きく上昇しました。実際、その年の11月にQE2の実施が発表されています。
FRBは市場との対話を重んじており、サプライズで新たな金融政策を実施することはほとんどありません。2010年のジャクソンホールシンポジウムが、QE2の実施という重要な政策決定を市場に織り込ませるとうステージになったことから、市場関係者はこの会合への注目を高めることとなったのです。
あまりに市場関係者の注目が高まり過ぎたあまりに、2013年、バーナンキ氏はジャクソンホールシンポジウムを欠席したことがあります。この年2013年5月22日、バーナンキ氏はテーパリング(量的緩和策の出口戦略)を示唆しており、市場関係者の間では9月のFOMCでテーパリング開始が決定されるのではないかという観測が強まっており、8月のジャクソンホールでそれを確認することになると思われていました。それまでの25年間、FRB議長がジャクソンホールシンポジウムを欠席したことはありませんので、市場には様々な思惑が広がることとなります。結局、テーパリング開始時期は市場関係者らが予想していた9月ではなく12月まで遅れることとなったのですが、8月時点でバーナンキ氏はテーパリング開始時期について、言質を取られるのを避けるために欠席したのだろうと言われています。
同じようなことが、昨年ありましたね。現FRB議長のイエレン氏が昨年2015年のジャクソンホール会合を欠席しています。昨年は、米国の利上げ時期が市場の主要テーマとなっており、早ければ9月の利上げが目されていましたが、実際に利上げが実施されたのは12月でした。この流れを2013年当時のバーナンキ氏を習ったものだとするならば12月利上げの可能性があると予測した市場関係者もあったのを記憶しています。昨年2015年8月は中国の人民元の切り下げによるチャイナショックが米国株はじめ、世界の金融市場を混乱に巻き込みました。イエレン議長もまた、利上げ時期を巡って無用な混乱を招くのを避けるためにジャクソンホール会合を欠席したものと言われています。
そして、今年2016年。イエレン議長は今週26日にジャクソンホールシンポジウムにて講演を行うこととなっています。7月のFOMCではFRBメンバーの意見が分かれており、市場は年内利上げの可能性をそれほど織り込んでいないのが現状。昨今のドル安は、米国の次の利上げがかなり遅れるとの思惑が市場に蔓延していることが主因ですが、FRBが年内利上げを望むならこの場を使ってイエレン議長がタカ派的発言を行うことも考えられるとして注目されています。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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