第223回 にわかに強まってきた米国9月利上げの可能性【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第223回 にわかに強まってきた米国9月利上げの可能性【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

にわかに米国の9月利上げの可能性が出てきました。このところ米国地区連銀総裁らFRB高官による「タカ派発言」(利上げに前向きな強気発言)が相次いでいましたが、先週26日のジャクソンホールシンポジウムでのイエレン議長の講演、並びにその後FRBのフィッシャー副議長の補足発言が決定打となり、マーケットの空気をガラリと変えてしまいました。

FRBは2015年12月に1度利上げを実施、その時点では2016年は年4回の利上げを見込んでいましたが、米国はその後8カ月に渡って利上げを見送っています。現時点では年2回にまで利上げの可能性が後退していることから、金利先高観から買われてきたドルには大きな調整が入りました。ドル/円相場も100円割れまで円高ドル安が進み、アベノミクス失敗などの指摘もありますが、米国利上げ思惑後退がドル安を誘引した側面は強かったと思われます。すっかり米国は利上げできないだろうとタカを括っていた市場ですがイエレン議長、フィッシャー副議長の発言に驚き、急速に年内利上げの可能性を織り込み始める動きとなっています。


◆8月26日ジャクソンホールでのイエレンFRB議長講演

・この数ヵ月で追加利上げ実施への論拠強まった。

・米経済は目標とする最大雇用と物価安定に近づいている。


◆イエレン議長講演を受けてフィッシャーFRB副議長発言

・8月雇用統計はFOMCの決定に影響する。

・イエレン議長の発言は9月利上げの可能性と整合。


雇用やインフレ率といったFRBの2つの使命、デュアルマンデートはほぼ達成していたにもかかわらず利上げに慎重だった背景には、中国人民元切り下げの影響で年初から下落してしまった株価動向や、6月の英国のEU離脱の影響などを見極めたいという面もあったかと思いますが、大統領候補であるトランプ氏やヒラリー氏が選挙戦を戦う際に材料としてきた「ドル高による米経済への影響」も大きかったと思われます。足元を見てみますと、株価は史上最高値圏で推移、ドル高もかなり修正された結果、米国の製造業セクターの景気を見る際の指標であるISM製造業景気指数や耐久財受注額などが改善しており、利上げの条件が整いつつあるようです。

ISM製造業景況指数は2015年11月から2016年2月までの4カ月間も好況と不況の分かれ目とされる50を下回り下落基調にありました。ドル高が影響していたことは明らかでしたが、2月をボトムに改善傾向にあります。また、驚いたのが8月5日発表された7月の耐久財受注額です。前月の改定値から4.4%増で3カ月ぶりの増加となりました。この増加率は2015年10月以来9カ月ぶりの大きさです。耐久財受注というのは製造業新規受注の項目の1つで耐久年数3年以上の耐久財の出荷・在庫・新規受注・受注残高の数字が発表されます。製造業新規受注の数字はまだ目に見える改善が見られませんが、この指標は翌々月の月初に公表されるのに対し、耐久財受注は翌月下旬に速報値が公表されるため、速報性が高く、市場の注目度も高い指標です。耐久財受注の数字が6月の▼0.2%、7月の▼4.0%から+4.4%へと飛躍的に伸びた点には注目してもいいでしょう。

26日フィッシャー副FRB議長は「8月雇用統計はFOMCの決定に影響する」「イエレン議長の発言は9月利上げの可能性と整合」と述べており、俄然今週末9月2日金曜に発表される8月分の雇用統計が注目となりました。ここでそれほど悪くない数字が出るならば、9月利上げの可能性が高まり、市場はそれを織り込む動きを加速させると思われます。今週はドル高基調が強く、雇用統計結果如何では更なるドル高が見込めるかもしれません。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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