第179回 高速鉄道車内での禁煙を徹底 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第179回 高速鉄道車内での禁煙を徹底 【北京駐在員事務所から】

中国では、男性の喫煙率が日本よりも高く、「たばこ文化」が根強く残っていたのですが、ここ数年で規制が急速に強化され、禁煙あるいは分煙がようやく定着してきたように思われます。
当事務所が入居するオフィスビルも、館内は全面禁煙で、玄関脇の屋外に喫煙所が設けられています。昼食時間帯などは一服する人達が鈴なりという状況です。
北京では飲食店も全面禁煙なのですが、以前は店員に頼むと灰皿を持ってきてくれる店も見られました。最近ではこれもほぼなくなってきたように思います。

全国に路線網を広げている高速鉄道も車内全面禁煙なのですが、長時間の乗車中、我慢できない乗客が洗面所などで喫煙するケースが後を絶たず、煙感知器が作動して列車が減速あるは停車を余儀なくされるトラブルが頻発しています。
列車内での喫煙については、2014年に罰則規定が導入され、2,000元(約3万円)以下の罰金が科せられることになりました。
それでも、なかなか喫煙を撲滅できないということで、鉄道事業の運営者である中国鉄路総公司は、このほど罰則の強化に踏み切り、以下の二つを新たに導入しました。
(1)列車内で喫煙した者に、違反を繰り返さない旨の誓約書の提出を求める。(2)再度違反を犯した者には、高速鉄道への乗車を禁止する。

中国では、16歳以上の全国民に対し、公安局が発行する写真入りの身分証明書が交付され、長距離鉄道の乗車券の購入時や乗車時に提示する実名制が取られているため、このような罰則を科すことができます。
鉄道への乗車ができないことは、中国で生活する上で大変な不便となりますので、今回の罰則強化が効果を挙げることが期待されますが、一方で「上に政策あれば下に対策あり」のお国柄ですので、今後罰則を無力化するような様々な手段が考案される懸念もあります。
「超高額の罰金」が最も有効なようにも思うのですが、中国では違法行為に対する罰則が総じて軽く、喫煙のみに重い罰を科すことが難しいと思われ、悩ましいところです。
まずは今回の罰則強化が喫煙の撲滅につながるか、注目されます。

北京などの大都市では、屋内での禁煙はかなり定着してきたように思う反面、日本で問題視されている「歩きたばこ」を含め、屋外での喫煙については規制がありませんので、時に危険を感じることもあります。
特に、バス停での喫煙は逃げ場がないので大変です。
PM2.5など大気汚染物質の健康への影響が社会問題となっていますが、喫煙率の引下げや間接喫煙の防止の方がより重要ではないかと考えてしまいます。しかしながら、国内での貧富の差を反映した健康への意識や生活習慣の差は大きく、禁煙や分煙を全国に広げるまでには、まだ長い道のりが必要になりそうです。
政府や医療機関、教育機関などの連携による継続的な取組が求められます。
中国での喫煙習慣や禁煙への取組を見ますと、日本から10年ないし20年くらい遅れているように思えます。おそらく、今後数年で急速にキャッチアップして行くのでしょう。
喫煙に限った話ではありませんが、数年ごとに定点観測をすると、変化の速さに驚かされるのではないでしょうか。これからも長く注目して行きたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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