第225回 米株下落でどうなるドル/円相場、意外と底堅い理由【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第225回 米株下落でどうなるドル/円相場、意外と底堅い理由【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ダウ平均と日経平均の月間騰落率、過去30年さかのぼって検証すると9月が最もパフォーマンスが悪いと先週のコラムで書きましたが、先週9月9日金曜、ダウ平均は大きく下落しました。

9月21日は日銀の金融政策決定会合と米国FOMCがあることから、ここでの日米の金融政策に向けた思惑による織り込みが始まっているのかもしれません。日銀は今回の会合でこれまでの政策の統括検証をするとしていますが、8日、日銀の中曽宏副総裁の講演でマイナス金利政策に副作用があることを認めたうえで、マイナス金利を深堀りすることはコストを考えたうえで「なお必要とすることは十分にあり得る」と発言しており、市場は日銀がマイナス金利を深堀り(拡大)することも意識し始めたものと思われます。

また、8月分の雇用統計やISM製造業景況指数、ISM非製造業景況指数の悪化などから米国の9月利上げの思惑は後退しているものの、FOMCのボードメンバーらはタカ派発言を繰り返しており、米国の9月の利上げが絶対にないとは言いきれぬ環境にありました。注目された12日月曜日のブレイナードFRB理事の講演はハト派的だったことから9月利上げの思惑はさらに後退、米株は下落の半分を取り戻す反発を見せており、利上げを巡る思惑が米株のボラティリティを上昇させている側面もあるでしょう。

あるいは先週のコラムにも書いたように、11月末決算が多い欧米ファンド勢の解約が相次いでいるのかもしれません。45日ルール適用でファンドが解約申し入れに従ってポジションを閉じていると仮定するならば、9月15日まではこうした「資金の逆流」リスクにさらされることになります。特に史上最高値圏にまで上昇していた米株へ投資していたファンドは利益となっているでしょうから、最も手仕舞い売りにさらされやすい市場と言えましょう。

様々な背景が推察されますが、この9月もアノマリー通り米株が大きな調整に入るとするならば、ドル/円相場も大きく下落するリスクにさらされる、という懸念が生じます。米株が崩れ、日本株が崩れてしまうとなると「リスクオフ」です。リスクオフ相場の時には、円は買われるという特性があり、ドル/円相場はいよいよ100円割れが常態化するかもしれない、、、そんな懸念も渦巻いています。

しかし、9日金曜日、ダウ平均は400ドル近く下落する局面もある大幅安の相場となったのですが、ドル/円相場は大きな下落となりませんでした。むしろ小幅に円安ドル高に動いたのです。12日のブレイナード理事の講演を受けて101.50円台まで円高が進む局面がありましたが下値は堅い印象。このドル/円相場の底堅さの背景には何があるのでしょうか。

日銀のマイナス金利は銀行の収益を圧迫するとして、副作用が大きいことも問題視されています。このため、もし日銀がマイナス金利を深堀りするとするならば、銀行の収益を圧迫しないようにする政策も併せて発表するのではないかとの見方も出ています。現状のマイナス金利政策では債券市場で短期金利と長期金利のサヤが平坦化しているために、金融機関の収益が上がらなくなっているのですが、このサヤを拡大させる措置が同時に発表されるのかもしれないというのですが、これが意識されているためにドル/円相場は下がりにくくなっているとも考えられます。

また、もしヘッジファンドの解約に伴う売りが広がっていると仮定するならば、今起こっていることは「ポジションの逆流」です。現在買っていたものは売り手仕舞いを迫られますし、売っていたものは買い戻しを迫られます。ドル/円相場では円買いポジションが大きかったことを考えればポジションの巻き返しが起こるとするならばショートカバーによる上昇圧力がかかるという可能性も否定できないと思います。

以上の背景から、この9月の米株下落は「リスクオフならドル/円相場は下落する」という教科書的な動きとは異なる動きとなるかもしれません。ともかくここからはボラティリティが上がる時期にはいります。休むも相場ですが、前回コラムにも書きましたように、この時期の大きな調整の安値は買い妙味があると考えています。※ただし投資判断はご自身で、くれぐれも慎重に!


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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