第226回 21日日銀、FOMC前にユーロとポンドに異変?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第226回 21日日銀、FOMC前にユーロとポンドに異変?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

今週21日水曜日は日銀の金融政策決定会合と米国FOMCが開催されるため、結果によっては円、あるいは米ドルが大きく動くかもしれません。材料待ちでマーケットが膠着する中、9日金曜の為替市場では、ユーロとポンドが大きく下落しました。

過去のモーゲージ担保証券(MBS)の不適切販売をめぐり、米司法省がドイツ銀行に対し140億ドルに上る巨額の和解金を要求。ドイツ銀行は最大で30億ユーロ程度の提案を想定していたそうですので、この金額での和解のつもりはないと声明を出しています。ドイツ銀行の時価総額は183億ドル程度との試算もありますので、この支払いは不可能と思われます。実際に支払い義務が生じたというニュースではないのですが、またドイツ銀行か?!というリスク再燃への警戒がユーロ売りを加速させました。今年2月、ドイツ銀行は高リスクの社債であるcoco債の支払いができないのではないかという懸念から株価が急落、金融市場に不安を広げたことがありましたが、同銀行の財務状況は常にマーケットのテールリスクとされています。9日金曜は和解金要求のニュースを受けてユーロが下落した、という指摘もあります。

そして英ポンドは、英財務相が「EU離脱選択で欧州単一市場のアクセスを諦める用意がある」と発言したことを受けて大きく下落しました。6月24日、英国は国民投票にてEU離脱を決めましたが、離脱を決めた最大の理由は移民問題。EU加盟国は人、モノ、資本、サービスなどがEU単一市場へ自由にアクセスできるのですが、これを継続したいのなら、人の移動、労働者の移動も受け入れよ、ということです。しかし、英国側は移民規制がテーマとなった国民投票でブレグジットを決めたため、人、労働者の移動の受け入れは拒否したいと考えています。EU側は英国に対しEU単一市場へのアクセスを継続したければ、移民を受け入れることが条件としていて条件が折り合わず、ということで、財務相がこれをあきらめる趣旨の発言を行ったというものです。となると、英国シティ(金融街)の銀行にとっては必要不可欠であるEU顧客へのアクセスも失う(金融商品を自由に販売できない)ことになるなど経済的損失が発生します。そうなれば銀行はビジネス拠点を英国シティからEUへとシフトせざるを得ません。こうした英国経済の損失が懸念されることからポンドが売られたと考えられます。

しかし、ユーロ/ドル相場もポンド/ドル相場も日足チャートで俯瞰して見れば、レンジ内での動きです。ドイツ銀行の急落で、世界のリスクオフムードが伝播したかというと、そうでもないのです。確かに世界の株価は軟調ですが、これは21日の日米金融政策を控えての手仕舞いの範疇と言えばその程度。リスクオフ相場であるなら、ドル/円相場はもっと大きく下落していたはずです。9日金曜のドル/円相場は102.46円まで上昇。むしろ小幅に円安基調を保っていました。8月の米国のCPI小売売上高の数字が予想を上回ったことで、米国早期利上げ観測が強まったため全般「ドル高」基調だったためです。ユーロやポンドはそれぞれ独自にリスク材料が飛び出して売りが大きくなったという側面もあったかとは思われますが、それ以上に米CPIが良好だったための「ドル高」であった可能性が大きいと思います。つまり、足元の相場においては米国利上げ時期が最大の材料であり、これが全般の方向を占うということだと考えられるため、ドイツ銀行が危険だというニュースでリスクオフ、方向は円高だと決めつけないほうがいいと思っています。

しかしながら、今年に入ってから日銀会合を通過する度に円高が加速してきたパターンを考えると、決して楽観できるものではありません。今回はこれまでの金融政策の総括、検証が行われるということで並々ならぬ注目度となっていますが、発表される政策を予想するのは難しく、できるだけリスクポジションを落としおきたいという投資家らの手仕舞いに21日までは冴えない相場展開が続くものと思われます。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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