マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
9月FOMCで米国は利上げを見送りました。事前の金利先物市場でも、9月利上げの織り込み度が低かったこともあり、市場予想通りの据え置きだったために、マーケットの反応も限定的で、為替市場ではユーロ/ドルもドル/円相場も膠着したまま。長いレンジ相場が続いています。レンジが長ければ長いほどレンジブレイク時には値動きが大きくなるため、どちらに抜ける可能性が高いのかを見極める時期。9月FOMCでは年内1回の利上げに向けて強いメッセージを発したものの、「利上げの論拠が強まっているが、さらなる証拠を当分の間待つことを決めた」としており、ここから更に「米国の経済指標の良し悪し」にマーケットは神経質に反応する流れが続くものと思われます。
では、どのような指標に注目なのでしょうか。
まずは昨日発表されたISM製造業景況指数。
この指標は、300社以上の製造業企業の購買・供給管理責任者を対象に、受注や生産、価格など10項目についての民間調査会社によるアンケート調査です。現場の受注、在庫管理などを肌身に感じている担当者らの実感であるため、実体が数字となって確認されるよりも早く、景気の良し悪しを敏感に反映すると言えるでしょう。この数字が6月をピークに急降下となっており、なんと8月は景気判断の分かれ目となる50を割り込んでいました。9月のFOMCでの利上げ見送りはこのISMの悪化が一因ではないかという指摘もあるくらい大注目の指標ですが、昨日10月3日(月)に9月分の数字が発表されました。予想が50.2のところ結果は51.5。前回が49.4と50を割り込んでいましたので、今回50を回復し、尚且つ予想を上回る数字となったことが好感され、発表直後はドル高に動きました。年内利上げの思惑が高まっていくものと思われます。この流れが継続するかどうかが今週のポイントとなってくるでしょう。
そして今週は5日水曜日にISM非製造業景況指数も発表されます。こちらは、非製造業ですのでサービス業などの分野の調査内容ですが、こちらの指標も6月の56.5をピークに7月55.5、8月51.4と2カ月連続で下落基調にありますので、今回この下落に歯止めがかかるのかに注目です。9月分予想は53.0となっています。
更に今週末7日金曜日は9月分の雇用統計の発表があります。この雇用統計のNFP非農業部門雇用者数の数字も同じく6月の+28.7万人をピークに7月+25.5万人、8月+15.1万人と2カ月連続で減速中。9月分の予想は+17.0万人ですが、果たして。予想よりもいい結果が出ることが大前提ですが、この数字が8月の+15.1万人をも下回れば6月をピークに3か月連続での減少となりますので、年内利上げの思惑が一気に冷え込むこととなるでしょう。
しかしながら、あらゆる重要な経済指標が「6月」の数字をピークに減速しているのはなぜでしょう。はっきりしたことは現時点では解りかねるのですが、推測できるのは「ブレグジット」英国のEU離脱の影響です。ただし英国が米国に占める貿易の割合は第6位くらいで、それほど大きくないのですが...。
ドル/円やユーロ/ドル相場だけを見ているとブレグジット後、特にドル高が進行したということはなかったのですが、対ポンドでは猛烈にドル高が進んでいます。ポンド/ドルは大きく下落しました。対英貿易量がそれほど大きくはないとしても、ブレグジット後の対英貿易に多少なりとも影響があった可能性は否定できません(米国に占める貿易量第1位はEU、2位が中国です)。
昨日のISM製造業景況指数が景気の分かれ目の分水嶺である50を回復、ブレグジットの影響があったか無かったかは別にしても、持ち直しているため、夏の間の一時的な減速に留まる可能性も出てきました。これが水曜発表される非製造業景況指数、金曜の雇用統計と同様の傾向となるならば、年内利上げの織り込みが進むことで、ドル買いが旺盛となる相場が期待できるでしょう。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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