第183回 中国人が海外旅行の目的地を選ぶ際の決め手は? 【北京駐在員事務所から】

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第183回 中国人が海外旅行の目的地を選ぶ際の決め手は? 【北京駐在員事務所から】

日本では「爆買い」が一巡したと言われますが、中国人の海外旅行の目的、楽しみの中で、ショッピングは大きな割合を占めています。
日本では電化製品、化粧品、医薬品や日用雑貨が人気ですが、欧米の大都市でも高級ブランド品などを購入する中国人が増えており、こちらの新聞でも旺盛な消費ぶりが頻繁に報じられています。

ショッピングに加え、宿泊、観光や食事など滞在中の費用を考えると、為替レートの変動は無視できません。日本でも、1980年代後半から90年代にかけ急速に円高が進み、バブル景気と相まって海外旅行客が急増しましたが、中国でも経済成長に伴い所得が増加したことに加え、近年米ドルなど対主要通貨で人民元高傾向が続いていたことが、現在の海外旅行ブームにつながっています。

中国政府の国家観光局(日本の観光庁に相当)の下部組織で、旅行業に関する調査研究を行う中国旅遊研究院が、このほど中国人旅行客の海外旅行先の選定に関する調査を行い、結果を公表しました。
昨年から、人民元は米ドルに対し元安傾向が続いているのですが、この元安は米国への旅行に大きな影響をもたらしていないとの結果になりました。
一方、日本円、ロシアのルーブルやカナダドルに対しては、人民元高となり、これが各国への旅行者の急増につながったと分析しています。

本調査からは外れますが、オンライン旅行代理店大手によると、直近では、6月のBrexit以降英ポンドとユーロが下落したことで、英国及びユーロ圏の人気が上昇しているそうです。
中国人海外旅行客の動向に、為替レートが一定の影響を与えていることがうかがえます。
旅行者が増え、以前よりも所得水準の低い人々が海外に出かけるようになったことで、費用により敏感になっていることも考えられます。

為替レートに加え、旅行先の選定に大きな影響を与えている要素が「テロの脅威」です。
旅遊研究院の調査でも、タイ、フランス、トルコ、エジプトなどで、中国人旅行客の減少が見られました。
別の調査でも、中国人に大人気のヨーロッパで、最近はテロの不安がより小さいと見られる北欧、東欧諸国の人気が高まっているとの結果が出ています。
日本人旅行客も、テロへの不安からフランスを訪問する人が減り、パリ行きの航空便に空席が目立っているとも伝えられていますが、いくら通貨安が魅力的でも、安全に不安のあるところには足が向かないという訳です。至極もっともではあります。

今年に入り、対円では元安が進み、爆買いの一服と合わせ、中国人の購買力に依存していた百貨店、量販店などには逆風が吹いています。
今週は、年間最大の旅行シーズンである国慶節(建国記念日)の連休で、日本にも再び多くの人が訪れていますが、最近言われております「モノからコトへの消費の変化」が見られるのか、あるいは新たな訪日旅行客がまた多くの商品を購入してくれるのか、注目されるところです。

中国人海外旅行客の増加傾向を見ますと、1980年代から90年代にかけての日本人に重なるところが多いのですが、何といっても数が桁違いですので、影響も大きなものがあります。
一過性の消費に期待するのではなく、日本の「おもてなし」でリピーターを確保することが求められます。業界関係者の努力に期待したいところです。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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