第229回 ドル/円相場は底入れしたか?!センチメントの変化の背景【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第229回 ドル/円相場は底入れしたか?!センチメントの変化の背景【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ドル/円相場の円高の流れは止まったでしょうか。市場にはまだまだ90円方向への円高を警戒する声が強く残りますが、100円割れが常態化することなく円安方向に動き出したように見えます。様々なリスクへの警戒が根強くリスクが取り難いセンチメントにはあるものの、そのリスクに対しても、過剰な警戒は無用ではないか、という見方も出始めています。

①黒田日銀緩和の限界論

2015年12月の補完措置、2016年1月のマイナス金利導入以降、市場の日銀に対しての評価は厳しいものがあります。2016年7月にはETF買い入れ額枠を6兆円に拡大するも、海外勢は官製相場を嫌うとして批判する声が大きく、9月のイールドカーブ・コントロール導入においても、長期金利をコントロールできるわけがないとして批判の声はより大きくなった印象。実際、黒田日銀総裁が講演や会見で言葉を発する度に為替市場では円高気味に動くアルゴの存在も指摘されています。

⇒9月の日銀会合で導入された政策に対しては、前FRB議長のバーナンキ氏は「ヘリコプターマネーに似ている」と評価、ローレンス・サマーズ元米財務長官は「日米欧ともにヘリマネを実質的に導入」としており、極めて適切な方向だとコメントしています。ヘリマネの定義はここでは割愛しますが、今後日銀は実質ゼロ%で資金調達が可能となりました。財政出動が伴えばヘリマネ導入との認識が急速に広がり、評価は一変する可能性があると考えられます。

②ドイツ銀行破たんリスク

ドイツ銀行が抱えるデリバティブ残高はドイツのGDPの25倍とも報道されており、自力での再生は不可能だと指摘されています。そんな中、米司法省から最大で140億ドルもの制裁金支払いを求められたことでドイツ銀行株が再び大きく下落、破たんすればリーマンショックの比ではないと金融危機を懸念する声が大きくなっています。

⇒週末、ブルームバーグが「カタール王族、ドイツ銀持ち株を最大25%に買い増し検討」と報じています。最終的な合意はまだですが、この株式取得が実現すれば経営陣の陣容が変わる可能性もあるようです。最終的にはドイツ政府が公的資金を注入することで救済されるだろうと考えられていますが、メルケル首相は表向きにはこれを否定しており、株価が下がり続けていました。こうした買い手が登場することで、株価下落が止まる可能性も出てきたとみることもできるでしょう(カタールは2014年にもドイツ銀行に資本を入れているため、後に引けないだけかもしれませんが)。

③史上最高値圏にある米株の天井打ち

ここ数年、米株が天井を付けた可能性が指摘されながらも崩落には至っていないのは、米利上げのペースが予想より遅いためだ、という見方が大勢です。しかし、年内いよいよ2回目となる利上げが実施されれば、金利上昇から米株下落圧力は免れないとの指摘も根強く、リスクが取り難い環境にあります。トランプ大統領誕生が株価暴落の引き金を引くとの悲観論も。

⇒2016年年初からの原油下落で、米株も年初には大きな下落を演じました。しかし原油価格は1月と2月につけた26ドル台がWボトムとなって底入れ完了。9月のOPEC非公式会合では減産合意のサプライズで先週は50ドル大台にまで回復してきました。NYダウは、輸送株やエネルギー株の割合が比較的高いため、原油価格上昇はエネルギーセクターを支えることから、NYダウが下がりにくくなっています。原油価格が以前のような下落に見舞われない限り、NYダウが大きく崩れるリスクは少ないと考えることもできるでしょう。トランプリスクについては正直まったくワカリマセン。

また、これまで本邦機関投資家らは外債投資をする際に、円高になれば為替変動リスクを負うとして、「ヘッジ付の外債投資」を行ってきていたのですが、これを外して「裸」で外債投資する機関投資家が出てきたようです。生保や銀行などの機関投資家らはより高い利回りを求めて、外国債券投資に迫られていますが、これまでは外債を買うのと同額以上の円買いを為替市場で行うことで為替リスクを避ける投資をしてきました。しかし、この夏以降はヘッジ無しの外債投資が増えているといいます。その背景は2015年に1ドル=120円を超える円安だったのと比べ、100円近辺は外債の値ごろ感が働きやすくなった、とか。こうした動きが広がれば非常に大きな円安圧力となってきます。

大統領選を控え、まだまだ市場には悲観論が根強く残っていますが、徐々に悲観論が後退する機運が出てきているようです。100円台前半はドル買いに妙味アリの水準と考えて良いかと思います。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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