第187回 小中学校でスキーやスケートを必修に? 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第187回 小中学校でスキーやスケートを必修に? 【北京駐在員事務所から】

北京市は、隣接する河北省の張家口市とともに、2022年のオリンピック、パラリンピック冬季大会を開催します。
開催決定後、北京では、ウィンタースポーツへの関心が高まっており、政府がスキー場やスケートリンクの増設と既存施設の改修を進めています。
北京市内には、現在室内、屋外各20ヶ所の公共のスケートリンクがあり、北京市政府の体育局は2022年までに室内16ヶ所、屋外50ヶ所のリンクを新たに整備する計画です。
あわせて、スキー場についても、30ヶ所の新設と、既存の22ヶ所の改修を行う予定です。

大会の成功に向け、さらに機運を盛り上げようということで、体育局はこのほど、市内の小中学校でウィンタースポーツを必修にするとの方針を発表しました。
最低一種目を、週1時間学習するとのことです。
一方、授業内容を決定する市の教育委員会は、体育局の方針発表に困惑しています。
担当者は、多くの学校で、ウィンタースポーツを教えるための設備も、また指導者も不足しているとし、必修化について何らの決定もされていないと述べています。

体育局の方針発表後、保護者や教育界からは、歓迎する声や否定的な意見など様々な反応が示されています。
教員養成大学の教授は、オリンピック、パラリンピック大会の開催に向け、ウィンタースポーツの発展を目指すことは良いとしながらも、設備の不足や児童生徒の関心など、現実にも目を向けるべきと指摘しています。
同教授は、男子にアイスホッケーが人気であるにもかかわらず、授業に採用される予定が無いことにも、疑問を示しています。
一方、5歳の娘を持つ父親からは、スケートが大好きな娘のために、小学校で是非スケートの授業を行って欲しいとの期待の声が挙がっています。
現時点では、政府内で意見の不一致があり、また設備の不足等は容易に解消できる問題ではありませんが、2022年に向け、全市一斉にとは行かずとも、授業への採用が進むよう、願いたいと思います。

北京では、複数の商業施設で、映画館やゲームセンターとともにスケートリンクが営業しており、子供向けのスケート教室(フィギュア及びホッケー)は大盛況です。
真冬になると、市内の川や公園の池が凍り、至るところでスケートを楽しむことができます。
一方、降雪がほとんどないため、スキーは一部の愛好家が楽しむものという感じです。
周辺のスキー場も、全て人工雪での営業です。またスポーツ用品店でも、スキー用品は見かけた記憶がありません。まだまだこれからというところでしょうか。

日本では、スキーやスノーボードを楽しむ人が減り、スキー場や関連業界は、豪州や東南アジアといった海外からの集客に注力するなど、生き残りに懸命です。
1980年代、バブル経済の頃には、金曜日の夜に東京丸の内のオフィス街から多くのスキーバスが出発していました。今思うと隔世の感があります。
中国でも、かつての日本のように、いつかスキーブーム到来となるのでしょうか?
用具やウェアのメーカーなどは期待一色でしょう。2022年、またその後が注目されるところです。

中国のウィンタースポーツ事情に、昔の日本が重なって見える話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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