マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場はやや波乱の様相を呈してきました。それまでは、中間決算であまり芳しくない結果が明らかになってきていても堅調な推移が続いており、これ悪材料は既にかなり織り込まれていたという印象にありました。実際、新興国でも景気底打ちの気配が見え隠れしてきており、徐々に風向きは暖かくなってきているように思います(気象面では逆に、日々、冬の気配が増していますが)。しかし、未だに混迷状態にある米大統領選の行方が当面の波乱要因として急浮上してきた格好です。選挙は11月8日で、こればかりは結果とその後の反応が全く読めません。しかし、ニュースが一巡してくれば、市場は落ち着きを取り戻すのではないかと予想しています。引き続き、年末に向けては一旦相場が盛り上がってくる状況も十分あり得る、と思っています。
さて、今回は満を持して「ロシア」をテーマに採り上げます。言うまでもなく、このテーマは12月のプーチン露大統領訪日に関連するものです。首脳会談の帰趨はまだまだ不明ですが、北方領土に関しても何らかの進展があるのでは、との期待も高まっています。政府はロシアとの経済協力に特化した大臣ポストを新設しており(経済産業大臣が兼務)、何がしかの具体的なアクションに向けての地ならしを進めているようにも思えます。株式市場では既にロシア関連銘柄が注目され始めていますが、プーチン大統領訪日の結果次第では、大きく市場を席巻するテーマに発展する可能性もあると考えます。今回は、相場が盛り上がる「ちょっと早め」を意識したテーマと言えるでしょう。
実は、ロシア関連というテーマは、かつても何度か株式市場でも注目されています。古くは1990年前後。当時はソ連の崩壊直後という特殊事情もあり、日本からの経済的な援助に注目が集まりました。一説には、北方領土返還が最も現実味を増した時期でもあったとも指摘されています。株式市場では、天然資源開発に関連する商社や建設機械といった銘柄群が物色されました。その後、例えば1990年代にはサハリン(樺太)鉱床の開発といったプロジェクト(通称サハリン2)の合意などが実現し、実際にビジネスに繋がる動きも活発となったのを記憶しています。しかし、このサハリン2プロジェクトは完成間際の2006年に所有権がロシア企業に移ってしまい、日本企業の受け取るメリットは大幅に減殺されてしまいました。ロシアとのビジネスの難しさを示した一例とも言えますが、プーチン大統領訪日への期待が高まるわりにロシア関連が株式市場でまだ盛り上がってこないのは、そういった経験が影響しているのかもしれません。換言すれば、平和条約締結が現実味を帯びてくるにしたがい、そういった政治リスク低下への期待は高まってくると想像します。このことは、ビジネスチャンスの広がりにも繋がることでしょう。12月の首脳会談は非常に注目されるところです。
では、どういった銘柄がロシア関連となるのでしょうか。定石で考えるならば、ロシアの天然資源がビジネスの核となることでしょう。具体的には、重機やプラント関連、商社といった業種が注目株ということになります。林業や水産漁業もそこに含まれるかもしれません。サハリンから北海道を繋ぐ大陸横断鉄道という構想もあるようですから、それが現実化するとすれば、トンネルや大橋梁といったインフラ工事関連にも光が当たる可能性もあります。これらは本命中の本命と位置付けられる業種になるでしょう。しかし、それではあまりに定石通りで面白くありません。ここではもう少し捻ってみたいところです。
筆者が注目するのは、ロシアにおける消費関連です。上記の定石からすると、一つ一つのビジネス規模は小さなものになりますが、その分、広い裾野が期待できます。電化製品やファッション、医療、自動車といった分野における日本製品の信頼度やセンスの評価は高く、安心して企業が進出できる環境が整えば、ロシア市場に食い込む可能性は十分あるものと考えます。人的交流が進めば、観光業のチャンスも相互に拡大するというシナリオも予想できます。シベリア鉄道が北海道に繋がれば、筆者も乗って見たいと単純に思ってしまいます。これは前回のコラムでも書きました「コト消費」の典型例でしょう。
経験的に、大きなテーマが明確に見えている一方、その具体的な関連分野はまだまだ漠然としている、というケースは「大相場」になる必要条件のように感じています。今回取り上げたテーマはまさにその条件を満たしているように思えます。さて、首脳会談の結果はどうなるでしょうか。あまり期待してはいけないと思いつつ(実際、ロシアからは期待値を引き下げるコメントも出て来ています)、成り行きを注視していきたいと思っています。
コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。
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