第233回 ゲームチェンジャーとなるか?!ポンドとNZドルがインフレ警戒の上昇へ【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第233回 ゲームチェンジャーとなるか?!ポンドとNZドルがインフレ警戒の上昇へ【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

2016年もなかなか決定されない米国の利上げ時期が大局のマーケットのテーマであり続け、米国以外の主要先進国が緩和政策を継続中であることから、マーケットが安定してくるとドル高基調になりやすかった1年でした。特にポンドは6月の国民投票でのEU離脱を決定した「ブレグジット」ショックが急激なポンド安を招きましたが、急激に進んだポンド安の影響で英国にインフレ警戒が出始めています。

11/3(木)BOE(英国中央銀行)開催の金融政策委員会。金融政策は据え置かれ、声明文では「年内の追加利下げがあり得るとしていた従来の方針を撤回」しました。同時に公表した四半期の経済見通しでは2017年のインフレ予想を引き上げています。1年後のインフレ率予想を従来の2.0%から2.7%へとおよそ3倍に引き上げています。声明では「目標を上回るインフレ率を許容するにも限度がある」と指摘しており「インフレ率が持続的に目標の2%に回帰することを確実にするため、金融政策は経済見通しの変化にいずれの方向にも対応する可能性がある」としています。場合によっては利上げもあることを匂わせる内容に、ポンドが大きく上昇しました。

NZドルもまた、インフレ警戒が出てきています。先週、NZの中央銀行が発表した四半期調査で、企業経営者は向こう1年間のインフレ率が平均で1.29%になると予想していることが発表されました。前回調査1.26%から上昇しています。中銀の政策が物価に浸透する期間とされている2年後の期待インフレ率は、前回の1.65%から1.68%に上昇。また、7日(月)、NZ統計局は第3四半期の消費者物価指数(CPI)上昇率を前期比0.2%から0.3%に訂正、これにより前年同期比の上昇率も0.4%と10月発表の0.2%から訂正されています。先週実施された乳製品大手企業フォンテラの乳製品価格オークションでも、乳製品価格が前回入札から11.4%も上昇しました。乳製品はNZの主要輸出品。乳製品価格上昇はNZ経済にとって非常に重要です。これも足元のNZドル高の材料となりました。

実際、NZの景気は上向いているようです。第3四半期の失業率が約8年ぶりの低水準へ。就業者数は、前期比1.4%増と市場予想の3倍近い伸びを示し、労働参加率も70.1%と少なくとも25年ぶりの高水準を記録しました。就業者数は前年比では6.1%増で、過去最大の伸びとなっています。NZ高抑制のためにNZの中央銀行は今週10日(木)の金融政策会合で利下げの可能性を示しており、現在まででも市場関係者らは今月の利下げ予想が大勢ですので、今月の利下げの可能性が完全に消えたわけではありませんが、利下げがあったとしても、あと1回とみられていますので、10日(木)に利下げが発表されても、それが材料出尽くしとなることは十分に考えられます。

英国やNZに出始めたインフレの芽。これが中央銀行の金融政策の「利下げ」スタンスを変えることが、ゲームチェンジャーとなって、ポンドやNZドルが上昇を加速させる可能性があるとみています。

一方で、米国が12月には利上げするとの予想が大勢ですが、この思惑は相当期間市場に織り込まれてきた材料であるため、実際に利上げしたところで、新たなドル買い要因となるとは考えにくいと思っています。ゲームチェンジャー、フレッシュなテーマ転換こそが、新たなトレンドの初動をとらえる際に重要なポイントです。

また、英国ではブレグジットが遅れる、あるいはブレグジットそのものが(理論的には)なくなる可能性も? というニュースが話題です。高等法院は3日(木)、英国がEU離脱手続きを正式に開始するためには議会の承認が必要になるとの判決を下しました。政府は上訴するとしており、最終的には最高裁での決着となるリスクがあり、離脱交渉の開始時期が遅れる可能性が出てきました。仮に最高裁でも「EU離脱には議会承認が必要」という判決となれば議会の承認がなければ、英国はEUを離脱できないことになります。ところが、国民投票では英議員の大部分が残留を支持していました。つまり議会がEU離脱そのものを阻止することが可能になるというのですが、、、。このニュースもまた、マーケットではポンド買いにつながっているようです。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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