第4回 住宅ローンのプライシング(収益性)【あなたはどうする?住宅ローン】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第4回 住宅ローンのプライシング(収益性)【あなたはどうする?住宅ローン】

「あなたはどうする?!住宅ローン」の連載を始めて早くも1か月が経ちました。毎回お読みいただき、ありがとうございます。これまでの3回では借り換えによるメリット、ローン金利の構造及びキャッシュフローについてお話ししてきました。
第4回となる今回はいよいよ住宅ローンのプライシング、つまり住宅ローンの収益性についてお話ししたいと思います。

まず住宅ローンを提供する金融機関のコスト(原価)ですが、資金調達コスト、審査・回収の事務コスト、団体信用生命保険の保険料、及び貸し倒れリスクの四つから構成されます。資金調達コストは現在のマイナス金利環境では、ほとんどゼロと言えるでしょう。審査・回収コストは、0.1%程度、団体信用生命保険の保険料は0.2%程度と言われています。最後の貸し倒れリスクですが、皆さん、住宅ローンの貸し倒れ率はどれくらいかご存知ですか?
銀行の貸し付ける住宅ローンで、約0.2%です。貸し倒れてもローン対象物件に抵当権を付けていますので、当該物件の処分によって半分は回収できるので、純損失コストは0.1%となります。これらを合計すると、住宅ローンを提供する金融機関側のコストは合計0.4%となり、これが住宅ローンの原価ということになります。

一方で金利収入ですが、現在最も低い変動金利型の金利は0.5%程度です。もし金融機関が0.5%でローンを出したとすると、コストが0.4%ですので利鞘収益はわずか0.1%ということになります。ずいぶん少ないと思いませんか?ここで見落とせないのが、金融機関が融資時に徴求する、融資残高の2%相当の事務手数料や保証料です。住宅ローンのコストを全て金利でカバーしていると仮定するとこれが丸々金融機関の利益になります。元本の2%というのは金利にすると約0.2%に相当しますので、金融機関が得る利鞘収益は合計0.3%ということになります。BIS規制で決められている住宅ローンのリスクウェイトは35%ですので、8%の自己資本比率を前提にするとROEで1%程度の収益性ということになります。

上記はあくまでも0.5%の金利だった場合です。もし、1%の金利だったらどうなるでしょうか。単純に利鞘収益が0.5%上がって0.8%となりますので、ROEは約3倍の2.85%です(ここでは資金調達コストを据え置くと仮定します)。ただ、現在新たに貸し出す変動金利の住宅ローンでは、金利が1%を下回るのが当たり前になっていますので、やはり住宅ローンのビジネスは、それ単体では収益性の厳しいビジネスと言えるのではないでしょうか。金融機関にとってみると、住宅ローンをそれ以外の様々な金融サービスのクロスセルの足掛かりと位置付けないと、正当化できない厳しい競争環境になっているのかもしれません。


MFS 代表取締役CEO 中山田 明
(住宅ローンコンサルティングサービス「モーゲージ・ネクスト」を運営)
家計の見直しは住宅ローンの借り換えから。ベストな住宅ローンを無料で診断できる「モゲチェック」(http://mogecheck.jp/へリンク)

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧