第237回 ミニ・ドルとして大注目のポンド【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第237回 ミニ・ドルとして大注目のポンド【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ポンドが騰勢を強めています。ブレグジットで急落、その後ハードブレグジット懸念でさらに下落を強いられて2014年7月から2年余り下落を続けたポンド/ドル相場は先週末11月11日につけた戻り高値を更新、ポンド円も一時145円台まで上昇し200日移動平均線を上回ってきました。

11月9日の米大統領選以降、米金利が急騰したことから全般ドル買いが進行し、11月末まではドル独歩高の様相を呈していましたが全面ドル高の地合いの中でも、あまり下げなかったのが英ポンド。先週末11月3日にはポンド/ドルが急伸する展開となり、ブレグジット以降の急落からいよいよ立ち直って反撃に出る可能性が出てきました。

一部金融機関関係者らはポンドを「ミニ・ドル」という位置づけで、ここから大きく上昇するという展望を持っているというコラムを発見。ポンドは貿易や投資面で歴史的にドルとの結び付きが強く、ドルと同じ方向に動く傾向があるため、ドル人気が再燃している今、ポンドにとっても有利。英国は歴史的に直接投資を通じて米国と関係があるため、ドルが上昇すれば機械的にポンドも堅調になる可能性が高いとして注目だというのです。

このところのポンドの材料を整理してみましたら、位置的に上昇余地が大きいというだけでなく注目である理由がいくつも出てきました。

①ハードブレグジット回避となるか

先週のポンドの大幅上昇の直接の要因は、英国のデービスEU離脱担当相が、可能な限り有利な単一市場へのアクセスを確保するために英国はEUへの拠出を検討すると述べました。また、ユーロ圏財務相会合議長のデイセルブルム・オランダ財務相は、コストはかかるが英国がEU域内市場に参加することは可能かもしれないと語っています。単一市場へのアクセス権の失効が最大の問題でしたので、これが残せるというのであれば、ハードブレグジット懸念は大きく後退するでしょう。この交渉の行方には注目です。

②英国の法人税率、G20で最低水準に?!

英国は法人税率を2020年までに17%に引き下げることを決定していますが、トランプ次期米大統領は選挙公約で法人税率を15%まで引き下げる方針を示しています。トランプ大統領誕生で、英国はG20で最低水準の法人税率になるよう、さらに税率を引き下げるのかどうかに注目。法人税率の引き下げは、英国への新規投資や資金回帰が見込まれポンド高要因となります。

③インフレの高まりで利下げサイクルは終焉か

ポンド安による輸入物価の上昇で、インフレが急速に上昇してくることが予想されます。このため、英中銀は一段の利下げはできないとの見方が広がっています。イングランド銀行のカンリフ副総裁は、EU離脱決定後のポンド急落によって金利を過去最低水準に維持することが困難になったとの見解を示すとともに、金利を押し下げてきた諸要因が後退しつつあるかもしれないと述べています。また、米大統領選でのトランプ氏の勝利後に世界の長期金利とインフレ期待が上昇を続けていることについて、「雰囲気が変わった感じがある」と指摘しており、英実質金利が当面は引き続きマイナスにとどまることが必要となる可能性があるとしつつも、ポンド安を受けて、英中銀は必ずしも低金利を維持できない可能性があるとコメントしています。利下げサイクルにあったこともポンド安の一因でしたが、このサイクルが終了し、次は利上げとなればポンドは巻き返される可能性が大きいと思われます。

④「ペトロポンド」~産油国英国は原油高の恩恵も

北海油田の利益が英国の税収の10%前後に達した1980年代、石油開発が盛んだった時代にポンドに冠せられていた「ペトロポンド」という言葉があります。ペトロカレンシーというのは産油国通貨を称する言葉ですが、英国は2015年でも世界21位の原油の生産量を誇る原油生産国です。OPECが9年ぶりの減産合意にこぎつけたことで、原油市況が上昇していますが、原油高は英経済にとってプラス。北海ブレントオイルとポンド/ドルは長期的には相関する傾向があり、原油高がポンド高を誘引する可能性も出てきました。

11月29日時点のIMMの通貨先物ポジションを見ると、ポンド買玉50,806枚に対して売玉は128,941枚。差し引きで78,135枚の売り越しとなっており、まだまだ売りポジションが積みあがったままです。ヘッジファンド勢らのポジションが為替相場を動かすわけではありませんが、何か他の材料がきっかけとなって、彼らが売りポジションを手仕舞う動きが加速すれば、大きく上昇する構造となっています。

2017年は米ドルと共に英ポンドの上昇にも注目しています。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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